「流白浪燦星 碧翠の麗城」(ルパン三世 へきすい れいじょう)
2026年3月5日~25日 東京・新橋演舞場
4月3日~26日 名古屋・御園座
9月2日~26日 京都・南座
2027年2月6日~26日 福岡・博多座
ルパン三世をはじめ、次元大介、峰不二子、石川五エ門、銭形警部といったキャラクターは、漫画やアニメを見ていない人にもすっかり定着している。まさに、それぞれが〝個性的なキャラクター〟で、それをベースに、自由奔放な世界が繰り広げることができる。例えば、数多く公開されたアニメ映画「ルパン三世」シリーズは、脚本や監督が「原点」を尊重しながら、独自の世界を展開。なかでも、宮崎駿監督の「カリオストロの城」(1973年)は、いまや「宮崎アニメの名作」としても高く評価されている。
そういったなか、「流白浪燦星」という新作歌舞伎が製作されたことに、違和感はない。それを実証するように、2023の「流白浪燦星」に続くシリーズ第2弾。快盗?が主人公というのは、「三人吉三 廓初買」などがあって、そういった意味でも時空、ジャンルを超えて、すんなり入り込める。流白浪燦星を演じているのは、片岡愛之助。赤を基調にした衣裳はもちろんのこと、いつもの歌舞伎口調よりも声質を少し高くし、アニメ版の山田康雄(初代)、栗田貫一(2代目)を倣って?語尾を伸ばすなど、工夫した役作り。さらに、今回は五ェ門も演じている。これによって、「二役早替り」といった歌舞伎独特の手法も楽しめる。また、前作に続いて出演の市川 笑也、市川笑三郎、市川中車も同様にいまやはまり役で、女形である市川笑三郎の「男前」も楽しい。
今回は中村米吉が扮する瀬織姫をめぐる物語。お家のためにと好きでもない男と結婚させられそうになるのを、流白浪燦星たちに助けられる。家を継ぐために自分の願いを封じ込めようか…。と迷う様子、そして、結末は現代にも通じる「女性の自立」を訴えているようでもある。一方、敵役として登場するのは、坂東彌十郎、市川猿弥という「VIVANT」繋がりの2人による安定感、重量感が、この芝居を引き締めている。また、初参加だが、東京・名古屋では演出協力として関わっていた市川青虎は、コミカルな味わいを出している。
観劇日(2026年9月4日、南座)は、高校の団体鑑賞日でもあった。2階段と3階にいる学生たちは、歌舞伎にはほとんど触れたことがなかっただろが、愛之助と米吉による宙乗りの場面は、ある意味で特等席。アトラクションを楽しむような笑顔、拍手が起こった。さらに、終演後には舞台にそろった出演者が「写真撮影OK」のサービス。「キャー」や「ヤッホー」といった、いつもとは違う大向こうからの掛け声もかかった。その光景に、これを機会に歌舞伎をもっと身近に感じてほしいと願うばかり。ポピュラリズムに近寄りすぎない距離感での新作歌舞伎。教養・文化という存在感だけにはとどまらない古典の取り組み。いろいろなことが頭によぎった。
〈あらすじ〉時は封建時代。諏訪の太守、春宮家の息女・瀬織姫(せおりひめ)は鎌倉初瀬寺で静かな日々を送っていたが、父の死により、お家存続のため執権の弾正と無理やり結婚させられることに。そこへ、寺にがっぽり貯め込まれた金を盗みに流白浪燦星がやってきて、二人は出会う。自由を夢見ていた深窓の姫に、流白浪という風が吹いたとき、幻の古城に秘められたお宝を巡る冒険が始まる。流白浪と姫、淡く通ってゆく二人の思いは、それぞれの定めの狭間で揺れ動く。流白浪と姫、次元、五ェ門、不二子が大敵の弾正と宝を争い、銭形がそれを追う。
〈原作〉モンキー・パンチ(「ルパン三世」より)
〈脚本・演出〉戸部和久
〈出演〉片岡愛之助(流白浪石川五ェ門)。中村米吉(燦星/瀬織姫)。市川 笑也(峰不二子)。市川笑三郎(次元大介)。市川青虎(丁稚 嬉太郎/諏訪山の大百足)。市川猿弥(七藍屋雅吉実は守矢正之助)。市川中車(銭形刑部)。坂東彌十郎(瀧津弾正久永)。
Ⓒモンキー・パンチ Ⓒ松竹
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。