「第三舞台 2026 パレイドリア」
2026年8月9日~8月30日 東京・紀伊國屋ホール
9月4日~9月6日 大阪・サンケイホールブリーゼ
9月19日 新潟・新潟県民会館 大ホール
9月23日 愛媛・新居浜市市民文化センター
9月26日~9月27日 福岡・J:COM北九州芸術劇場 大ホール
大阪公演(9月4日)を観劇したのだが、劇場へ向かうとき、まるで「同窓会」に行くような気持ちにもなった。みんな、どうなっているのだろうか?というちょっとした不安と懐かしい!というそれ以上の高揚感があった。1982年に鴻上尚史が主宰する「第三舞台」は、小劇場の劇団として人気を集めた。大阪では上本町(天王寺区)にあった近鉄劇場、近鉄小劇場を拠点に上演を重ねた。当時、新聞社の演劇担当だった筆者は観劇はもちろん取材、公演中は毎回、ロビーに姿を見せる鴻上と言葉を交わすのが恒例でもあった。劇団は2012年に解散。劇団員たちも舞台、映像で活躍している。それが今回、「集まれるだけのメンバー」が参集して上演されたのがこの公演。客席には、その頃に劇場に通っていただろう中高年が多く、互いに顔も知らないながら「緩い同窓会」気分。もちろん、鴻上もロビーに姿を見せ、久しぶりに軽く話すこともできた。そして、これも劇団恒例の鴻上が自筆の「ごあいさつ」も入口で配られた。
タイトルの「パレイドリア」とは、雲が顔に見えたり、壁のシミが動物に見えたりするような、無意味な形状やパターンに知っている形を当てはめてしまう心理現象・錯覚。これまで歩んできた道のりや経験が、自分や仲間に重なって、また違う関係性が生まれる?という暗示なのか。物語は、大学時代の仲間が、その当時にできなかった「桃太郎」を上演しようという内容。卒業から40年以上経っているという設定で、それぞれが事情を抱えながら、〈年を重ねて〉いる。
認知症を患っているリーダー格を演じている大高洋夫。昔の仲間に自分の想いを一気に語る様子は、あの彼独特の活舌の良さが健在。また、区議会議員に立候補している女性を演じた長野里美。「桃太郎」の芝居を持ち掛けられた時、「私はキジ(鳥)はしない」というセリフに場内は爆笑。解説をすると、長野が〝鳥の着ぐるみ〟で登場するシーンが劇団の1つの〝お決まりごと〟、ほとんどの観客はそれを知っているということ。さすが、今回はないのか、と思っていると…。
「桃太郎」というよく知られた話だが、考えてきると現代にも通じる問題を抱えている。「なぜ、おじいさん(男性)は芝刈りで、おばあさん(女性)は選択なのか?」というジェンダー、「風評で悪事を働いているといわれる鬼を、どんな理由で退治するのか?」といった国際紛争、「人間の心情とは罰に、合理的な判断を提案するAI」などなど。そういったシリアスなテーマを、ときには歌とダンス、ギャグを交えて訴えるのが、鴻上演出の真骨頂。
解散後、映像分野でもいっそう知られるようになった筒井真理子は映像で出演したが、勝村克信、筧利夫らさらにメンバーが結集して、「第三舞台 ◎◎◎◎年」公演を期待したい。
〈ストーリー〉大学時代、児童ボランティアサークルで子ども向けの芝居を準備していた仲間たちは、ある出来事をきっかけに、突然バラバラになった。四十二年後、認知症と診断された乾(大高洋夫)が現れ、「もう一度あの芝居をやろう」と言い出す。選挙に再挑戦する香川(長野里美)、人と距離を置いて生きる広渡(小須田康人)、亡き夫の記憶に寄り添う芝山(山下裕子)―止まっていた心が揺れ始める。乾の息子・輝一郎(中山優馬)は戸惑いながら父を支え、香川の娘・美咲は選挙の現実と母の過去の間で揺れる。児童館職員の江口とSEの萩原も巻き込まれ、止まっていた時間が奇妙な再始動を始める。戸惑いと混乱のなか、彼らは再び集まる意味を探し、忘れたはずの自分自身と向き合うことになる。
〈作・演出〉鴻上尚史
〈出演〉大高洋夫、小須田康人、長野里美、山下裕子、筒井真理子 (映像出演)、中山優馬、飯窪春菜、小松準弥、安西慎太郎、渡辺芳博、内田智大、大城智哉。
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。