「ルックバック」
2026年9月11日公開
藤本タツキの大ヒット漫画を原作に、 2024年に劇場版アニメとして公開された『ルックバック』の実写映画化。漫画家を目指す2人の少女を通して、瑞々しい青春の一コマを切り取った青春映画である。
舞台は秋田県のとある小学校。学年新聞に4コマ漫画を描いている藤野は、絵がうまい子、としてクラスメートに人気の4年生。そんな彼女の前に、ある日強力なライバル・京本が現れる。同級生の京本は不登校になっていた少女だったが、藤野を圧倒する画力を持っていた。活発な藤野と内省的な京本。正反対の2人は漫画を通じて惹かれ合い、一つの夢を追うようになる。
藤野がストーリーとキャラクターを書き、京本が背景を描いてアシスタントを務める……ドラマはコンビで応募原稿を描く2人の中学生時代を、秋田の四季を通して映し出す。漫画家を目指す話と言うと、ともすると熾烈な競争ばかりに目が行きがちだが、本作は漫画を完成させるプロセスに、主人公達の信頼関係の深まりを象徴させていて、人間にとって一番大切なものは何か、と問いかけているようなところがミソである。特に小学生の時の藤野と京本が、初めて話して「またね」と言って別れる場面は、2人の人生の決定的な瞬間を切り取っていて鮮やかだ。「またね」と言って、再会を約束した時、藤野も京本もそれぞれが繋がっていた小さな世界から、大きな世界に出て行く一歩を踏み出した。
アニメ版には無かった家族の描写が加えられていて、実写版はとても賑やかになった。藤野と京本が出会うきっかけを作った担任の先生が、印象的なキャラクターとして描かれ、扮する宮藤官九郎がトボけた味を出しているのもおもしろい。誰の人生にも1人くらいは、こんな忘れられない人物が居るのではないだろうか。
ストーリーは、絵の才能があるがゆえに葛藤する少女達の13年間を描き、予期せぬ方向へと展開していく。青く傷つきやすい青春を豊かな想像力で膨らませた、是枝裕和監督の傑作である。
(2026年/99分/日本)
配給 K2 Pictures
©藤本タツキ/集英社 ©2026 K2 Pictures・集英社
出演/出口夏希 蒔田彩珠
七瀬ふうり 岡田六花
野呂佳代 池田良 佐々木みゆ 山田真歩
宮藤官九郎 菅田将暉
原作:藤本タツキ「ルックバック」(集英社ジャンプコミックス刊)
監督・脚本・編集/是枝裕和
音楽:坂東祐大
岩永久美
映画ライター: 執筆実績「シティライフ」「シティリビング」「日本経済新聞」、2024年「第50回部落解放文学賞」児童文学部門・奨励賞受賞、2025年「第51回部落解放文学賞」児童文学部門・佳作受賞