「八つ墓村」
2026年9月18日公開
日本の地方に残る言い伝え、伝承、風俗などを題材に、独自の怪奇的な推理小説を数多く発表した横溝正史。彼の代表作と言える「八つ墓村」、それをはじめ。数々の横溝作品に登場して難事件を解決する金田一耕助。そうしたよく知られた物語が、〝Jホラーの巨匠〟と言われる清水崇監督で映画化された。この組み合わせはまさに、いまだからこそ実現した作品。1950年代だった設定を現代に置き換え、尾上松也が演じる金田一は、〝トレードマーク〟ともいえる、よれよれの着物に袴、丸いハットのルックスを、濃い緑のパンツにクリーム色やネイビーのシャツに中折れ帽とコートという姿。それでいて、飄々とした雰囲気は受け継がれて健在。また、内定が決まらない大学生の辰弥(奥智哉)、彼を岡山の八つ墓村で出迎えた田治見家の親戚の夫を亡くした美也子(堀田真由)は〝ごく普通の人物〟のようで、それがかえって。その後に待っている恐ろしい出来事との落差でもある。
そんななか、双子の老女、小梅と小竹(高島礼子の二役)、病に伏していると辰弥の兄・久弥と父・要蔵を演じる滝藤賢一の〝鬼迫〟の演技で、不気味さがじわりじわりと増してくる。もう1つ、シンボリックなのが、村の祭りでかぶられる猿、犬、蛙、鳥、鼠、魚、狐、女を模した8つの面。それらがひとつ消えるたび陰惨な殺人事件が起きるという設定、能楽や祭りの面のように、それ自体は無表情なのだが、見る側の状況、心理などによってさまざまな表情、喜怒哀楽が浮かび上がってくる。それが、不気味で恐ろしい。
「呪怨」シリーズや「恐怖の村」シリーズを手掛けてきた清水監督は「キャア~!」といった瞬間的な恐怖を交えながらも、じわりじわりと恐ろしさが増していくような演出。描かれた当時から半世紀以上は経つのだが、日本には、因習や一族や家族の「血」という考えは、まだまだあるということを感じさせる映画でもあった。
〈ストーリー〉大学生の井川辰弥のもとに舞い込んだ母の訃報。奇妙な探偵・金田一耕助に誘われ、 岡山県山奥に潜む「八つ墓村」を訪れる。封印された、ルーツと怨念の記憶が目を覚ます。村では、名家・ 田治見家の莫大な遺産の相続人である辰弥の帰還に合わせたかのように、不可解な連続殺人事件が 発生。 金田一と共に、事件に巻き込まれてゆく。美しき未亡人・森美也子、双子の大 叔母、不気味な村人たち──。 誰も知らない“八つ墓”の秘密が今明かされる…。
〈キャスト〉尾上松也、奥智哉、堀田真由、佐野岳、小野塚勇人、永瀬莉子、中村莟玉、笹野鈴々音、小籔千豊、中島亜梨沙、川瀬陽太、今野浩喜、渋川清彦、髙嶋政伸、高島礼子、滝藤賢一ほか。
〈スタッフ〉原作・横溝正史「八つ墓村 金田一耕助ファイル1」(角川文庫/KADOKAWA 刊)。監督・清水崇。脚本・尾ヶ井慎太郎、清水崇。音楽・アントンジュリオ・フルリオ。製作代表・髙𣘺敏弘、門屋大輔。エグゼクティブプロデューサー・吉田繁暁。企画・新垣弘隆。プロデューサー・前川盛哉、西麻美、柳田裕介、石塚慶生。アソシエイトプロデューサー・林宏之。ユニットプロダクションマネージャー・石田基紀。撮影・大内泰。照明・神野宏賢。録音・原川慎平。美術・原田哲男、橋本泰至。装飾・極並浩史。編集・鈴木理。助監督・毛利安孝。ホラー担当・川松尚良。制作担当・伊藤栄。衣裳・及川英里子。ヘアメイク・小出みさ、唐澤知子。特殊造形・特殊デザイン・百武朋。スタントコーディネート・東山龍平。ポスプロスーパーバイザー・朝海清史。VFXスーパーバイザー・山口幸治。音響効果・大塚智子。音楽プロデューサー・茂木英興。宣伝プロデューサー・山崎栞。プロダクション統括・佐藤正晃。製作・「八つ墓村」製作委員会。製作幹事・配給・松竹、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント。制作プロダクション・ダーウィン。制作協力・松竹撮影所。(C)2026「八つ墓村」製作委員会 (C)Yokomizo Seishi/KADOKAWA
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。