「道頓堀ロマネスク」
2026年8月29日~30日
新世界ZAZA HOUSE
OSK日本歌劇団の公演、出演者全員がピンクの傘を開け閉めして歌うテーマ曲「桜咲く国」。1930年から歌い継がれているその曲を作詞したのが、岸本水府(きしもと・すいふ、1892年~1965年)という人物。(※作曲は松本四良)。名前はあまり知られていないが、道頓堀のシンボル「江崎グリコ」のキャッチフレーズ「1粒300メートル」を生み出したコピーライターでもあり、本業の川柳作家としては初代中村鴈治郎を詠んだ「頰冠りのなかに日本一の顔」は有名で、道頓堀のうどん店「今井」近くにいまも石碑が残っている。そんな岸本の半生を描いたのがこの作品。2023年に道頓堀ZAZAで初演され、再演された。
岸本を演じたのはOSK日本歌劇団の元トップスター、桜花昇ぼる、そして4人のOG若木志帆、友麻亜里、愛瀬光、舞美りらが出演。作・演出は、OSK公演を数多く手がけている吉峯暁子。初演も道頓堀ZAZAで観劇したが、今回感じたのはドラマに「厚み」が増したということ。それは、登場する人物が増えたことが大きい。岸本と交流する実在の人物として、「夫婦善哉」などの小説を書いた織田作之助は初演から登場しているが、今回は食満南北(けま なんぼく)が新たに物語に加わった。明治から昭和にかけて歌舞伎作者、作家として活躍した人物で、初代鴈治郎の座付き役者でもあった。文化人が集まるカフェに、岸本、食満、織田が同席するシーンは、実際にあったかどうかは不明だが、ある意味「夢の顔合わせ」ともいえる。そして、食満の推薦で岸本が「桜咲く国」の作詞を手掛けることに…。できうれば、その後に岸本が、歌詞を作り上げるプロセスを描いてほしい気もした。
拙著「男たちの宝塚」が「宝塚BOYS」として舞台化されたこともあり、こういった少女歌劇団など演劇を題材にした作品が上演されることは、たいへん興味深いこと。再々演を期待したい。
〈ストーリー〉川柳作家であり、OSK 日本歌劇団のテーマ曲「桜咲く国」を作詞した岸本水府の半生を華やかに描いたミュージカル
〈キャスト〉桜花昇ぼる、若木志帆、友麻亜里、愛瀬光、舞美りら
〈スタッフ〉作・演出・吉峯暁子。作詞・吉峯暁子。作曲・編曲・合田佳代子。振付・中野栄里子、林燈子。舞台監督・國田未来。音響・舞台音響・GAM。照明・松﨑悟史・チーム M。宣伝美術・加納和可子。衣装協力・松竹衣裳株式会社。制作統括・緒花朋。制作・紫穂まいか。制作協力・株式会社KENYU クリエイション。主催・朋’s agency 合同会社。協力・番傘川柳本社。株式会社バイタルアートボックス(新世界 ZAZA)。協賛・ミナミまち育てネットワーク
※くしくも、同じ時期に、SKD(松竹歌劇団)トップスターの水の江瀧子を凰稀かなめ(宝塚歌劇団・元トップスター)が演じる「TARKIE」(作・樫田正剛、演出・植草克秀)が東京(2026年8月22日~30日)、大阪(9月3日~6日)で上演。男役として初めて短髪にし、「ターキー」として親しまれた彼女が、「桃色争議」と呼ばれた条件闘争のために劇団に退団させられることに。しかし、あまりの人気に「復帰」する様子などが描かれ、こちらも「少女歌劇のバックステージもの」として興味深かった(配信で観劇)。ただし、敵対する?タカラジェンヌを「お嬢さま劇団」として誇張するなど、このジャンルへのリスペクトが足りないのは残念ではあった。
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。