「白鳥とコウモリ」
    2026年9月4日全国
 2017年のある日、弁護士・白石健介の遺体が車の中で発見された。警察の捜査線上に浮かんだ男・倉木達郎は犯行を認め、事件は解決したかに見えたが・・・。「容疑者Xの献身」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」など、その生涯に小説106冊(共著をのぞく)を著し、先頃68歳で逝去した東野圭吾が、2021年に刊行した本格ミステリーの映画化。2017年の殺人事件と33年前の殺人事件との接点を描き出しながら、社会のひずみを浮き彫りにした一作である。
 ミステリーの秀作というと、筆者は単純なので殺人や復讐、悪意に満ちた罠などが、まず真っ先に思い浮かんでしまう。本作にもそういう要素は入っているのだが、原作者の東野圭吾氏自身が、非常に気に入っていたとされる作品だけに、面白い要素がある。それは何かというと恋である。現代の日本を舞台に、ギリギリの恋愛を描くのは、なにかと難しいのではないかと思う。シェークスピアが描いた「ロミオとジュリエット」のモンタギュー家とキャピュレット家みたいな対立軸なんて、どこにあるのだろう?と。しかし、殺人事件の被害者側と加害者側の家族という設定であれば、2人の間に立ちはだかる壁は相当に厚い。劇中ではその大胆な構図が浮いて、ラブストーリーが台無しになってしまわないように、緻密な背景と伏線が描かれていく。
 容疑者の長男役の松村北斗と、被害者の長女役の今田美桜が演じているのは、殺人事件の謎解きで共闘する主人公達だ。この2人を現代っ子らしい距離感で演出した岸善幸監督の起用は、岸監督の『正欲』での演出に惚れ込んだプロデューサーが、熱望したものだという。事件に巻き込まれてから、自分たちの父とは、どんな人間だったのかを見つめ直す主人公達の心理描写も、人生の皮肉を含んでいるようで重みがあった。脚本は『平場の月』『愚か者の身分』の向井康介。
(2026年/145分/日本)
配給 松竹
© 2026「白鳥とコウモリ」製作委員会
 出演:松村北斗 今田美桜 柄本佑 / 前原滉 井之脇海 宇野祥平 松岡依都美 松尾諭 丸山智己 三浦誠己 斉藤陽一郎 原田琥之佑 のせりん 漆山拓実 五頭岳夫 中村芝翫 井川遥 吉田羊 風吹ジュン 三浦友和

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