「レンタル家族」

2026年7月31日、新宿K’s cinema
8月21日から全国順次公開

けっして多いと言えない製作費で作り上げ、限られた劇場で公開された映画が、大ヒットする!「カメラを止めるな!」(2017年、上田慎一郎監督)、「侍タイムスリッパー」(2024年、安田淳一監督)は、そんな〝ジャパニーズ・ドリーム〟を成し遂げて、その後のスタッフやキャストの運命も大きく変わった。
「レンタル家族」も、またそんな現象を「予感」させる。2025年12月6日、新宿K’s cinemaにて1週間限定で公開されると、全ての上映回で自主映画としては異例の満員御礼を記録。同館のオフィシャルホームページでは上映日3日前の24時からWEB予約を開始すると予約が殺到し、アクセスが集中してサーバーがダウンする「事件」にまでなった。その評判は広まり、全国で順次公開することになっている。(2026年8月現在)。これは、観ないわけにはいかない!そして、観て「なるほど」と納得をした。
脚本も担当した上坂龍之介監督(31歳)は、この自主映画で初めてメガホンをとった。シリアスな題材なのだが、それを声高に訴えるのではなく、リアルで等身大の日常の風景としてとらえている。
 さまざまな事情で、「赤の他人を家族と装ってレンタル」する…。というのは現実にもあるし、ニセの家族を描いた「万引き家族」(2018年)、「「レンタル・ファミリー」(2025年)などの映画も作られている。この映画の場合の事情は、ヒロインの洋子は、母が患っている認知症。娘のことさえわからなくなっている母親、しかも洋子自身は離婚し、元夫は再婚するということで、実家に連れていくこともできなくなっていた。そこでレンタル夫を依頼することになったのだ。
 ネットによって見知らぬ人と〝知り合い〟になる。劇中で、洋子の会社の後輩女性は、「マッチングアプリ」と同じように考えているよう。このあたり、強く「違う!」とは言えないのは、考えてみると現代の世相を投影している。
 ビジネスとしての「レンタル業」を象徴する存在として、最初に派遣された男性のキャラクター、エピソードが描かれる。妙に明るく、愛想のいい振る舞いは、ビジネスライクを物語っている。次に派遣された松下は、見るからに誠実な雰囲気。彼が作った料理を食べながら(このあたりは展開が少し急ピッチすぎる?)距離が近づいていく。そんな松下も「マジメな青年」ではかたずけられた。
 さらに、そこに「レンタル娘」も加わる。ネグレククト(児童虐待)にも近い母親と2人暮らしをしている朱里。大人に嫌われないようにふるまう様子が、なんとも哀しい。
 出演者は、私にとっては失礼ながら顔は知っているものの「未知数」に近い。洋子を演じた荻野友里は、劇団「青年団」に所属、キャリア・ウーマンとして他人に弱みを見せないヒロインの脆さが伝わる演技を見せている。認知症の母・千恵子に扮した駒塚由衣は劇団四季出身、父親・忠勝役の黒岩徹はシェイクスピア劇などの舞台でも演技力を磨いてきた人たち。その地道な存在が、リアリティを増している。
 欲を言えば、洋子と松下が「レンタル」=ビジネスから心触れ合い仲へと変容していく過程。ネグレクトの母親がそこに至った事情、心情などを、さらに細やかに描いてほしい気はした。2026年8月からは全国でも拡大上映、じわりじわりとその熱気と評判が広がっている。。
〈ストーリー〉洋子は仕事で多忙な毎日を過ごす傍ら、定期的に実家へ帰省をし、父・忠勝とともに認知症の母・千恵子のケアをしている。千恵子の症状は近頃進行が早く、洋子が数年前に離婚したことさえ忘れ、帰省の度に元夫と娘について聞くのであった。
ある日、洋子は取引先の担当者から、「レンタル家族」というサービスを紹介され、レンタル夫を家事代行として自宅に呼ぶ。派遣された夫の松下豪としだいに打ち解けた洋子は、松下に千恵子のことを相談。すると松下は、自分を夫、知り合いの子役・安田朱里を娘として、家族を演じることを提案する…。
〈キャスト〉荻野友里、駒塚由衣、黒岩徹 龍輝、中本りな、松林慎司、中村芽生、田崎礼奈、田中壮太郎、鈴木浩文、小野孝弘、保田賢也、白木博子、小野翔平、荒岡龍星
〈スタッフ〉監督・上坂龍之介、脚本・土井涼介、上坂龍之介、主題歌・不眠旅行「homes」
KOHSAKA Pro
配給・ラビットハウス

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