「平行と垂直」
2026年8月28日、T・ジョイ梅田ほかで全国公開。
一見交わらないようでいて、確かにしっかりと支え合う兄妹の姿を、タイトルの〝平行と垂直〟に託した人間ドラマ。SUPEREIGHTのメンバーで、映画・ドラマ・舞台にと活躍の場を広げている安田章大が、企画・主演した物語である。
舞台は大阪。恋人にプロポーズされた日向希(のん)は、恋人・雅也(伊島空)から、東京に居る雅也の両親に会いに行くことになる。だが、そんな希の心に、一つ心配が顔をもたげた。自閉スペクトラム症の兄・大貴が、雅也の家族に受け入れてもらえるのだろうか・・・と。
カウンセラーの仕事をしている希と、清掃会社に勤める大貴。ドラマは、月に1度の恒例行事として、兄妹が大貴の家で食事会をする姿を印象的に描いている。ひたすら食事会を楽しみにしている大貴の心理と、結婚を前に多忙を極める希の心理が、どこかですれ違い始めるのである。見事な形の卵焼きを焼く、大貴の几帳面な仕草が、ホロッとさせる。そういえば『黄金狂時代』でチャップリンが自宅の食事会にお客さんを招くシーンにも、こんな胸が締め付けられるような繊細さがあった。
大貴がカクカクと、ロボットみたいに歩く出勤シーンも、大貴という人の内面を表現している。彼の所作や物事への反応は、時に人から異様な目で見られるが、商店街の八百屋ではキュウリをまけてくれる人が居たり、地域に根を降ろして生きている。
5歳の、こまっちゃくれた待機児童・紗奈との出会いのエピソード(写真)も、地味溢れる不思議な味わいで効果的だ。大貴に対して、腫れ物に触るように接する人物や、本音でぶつかっていく人物。『かぞくのひけつ』『毎日かあさん』などの小林聖太郎監督が描きだした、心温まる世界である。
(2026年/118分/日本)
配給:東映ビデオ
©2026「平行と垂直」製作委員会
岩永久美
映画ライター: 執筆実績「シティライフ」「シティリビング」「日本経済新聞」、2024年「第50回部落解放文学賞」児童文学部門・奨励賞受賞、2025年「第51回部落解放文学賞」児童文学部門・佳作受賞