「隣人たち」
2026年7月24日公開

 親しかった関係が「ある事」をきっかけに、それが真逆になり、憎しみ合う…。大なり小なり、そういった人間関係を経験した人も多いだろう。まして、それが「隣り同士」とくれば、なおさら。エスカレートして事件にまで発展したニュースを見ることもある。
 この映画は、そういった関係をサスペンスタッチ、さらに人間心理の恐ろしさが際立ち、〝ホラー〟とさえも感じた。設定は違うものの、男女関係を描いた「危険な情事」(1987年)、ファン心理の恐ろしさを綴った「恐怖のメロディー」(1971年)に共通する愛とそれと裏返しにある憎しみを、エンターテインメントとして提起している。
 おしゃれでカラフルな衣装を着て、それぞれが夫と1人の子供と暮らす2つの家庭。鮮やかなカラーで撮られた映像は、1950年アメリカのなに不自由ない暮らしぶりを象徴している。とはいえ、やはり苦悩があった。とくに、子供を生むまでに苦労し、医者からは「次はない」と言われたセリーヌと夫は、息子を「宝物」のように大切に育てていた。そんな息子をバルコニーからの転落事故で亡くしてしまう。セリーヌの不注意なのだが、現場に居合わせたアリスに対して、それまでとは同じように接することができない。同い年のテオと変わらず平和に暮らすアリスへだんだんと「憎しみ」に近い感情さえ抱くようになっていく。理屈では「おかしな感情」だが、テオをバルコニーに立つように仕向けたりして、だんだんとエスカレートしていく。そういった出来事に、2人の女性がどのように反応するか、きめこまやく描いていて、観る側が抱く「おかしな感情」にもだんだんと変化が起こってくる。、「いい人、悪い人」と簡単にわりきれなくなってくるのが、この映画の魅力。そういった視点からすると、互いの夫が「家庭のことは妻に任せている」といった立ち位置。彼らの心の移り変わりについて、もう少しこまやかな描写が欲しい気もした。
〈ストーリー〉1960年代アメリカ、大都市郊外の隣同士の家に住む親友のセリーヌ(アン・ハサウェイ)とアリス(ジェシカ・チャステイン)。同い年の一人息子を持ち、完璧な幸せな生活を送っていたふたりだが、セリーヌの息子が不幸な事故に遭ったことで関係は一変。喪失感や罪悪感に苦しむ中、互いの行動に疑問を持ち始める。いったいどちらが嘘をついているのか?
〈キャスト〉ジェシカ・チャステイン、アン・ハサウェイ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ジョシュ・チャールズほか。
〈スタッフ〉監督・撮影監督・ ブノワ・ドゥローム。脚本・サラコンラット。原作・オリヴィエ・マッセ=ドゥパス「母親たち」。コピーライト:2023 MINSTINCT INC. ALL RIGHTS RESERVED。提供: カルチュア・エンタテインメント。配給:ギャガ。映倫区分: G
※岩永久美も同作についてアップしています。ご参照を

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