「原爆資料館 語り継ぐものたち」
   2026年7月18日から東京・ポレポレ東中野、8月1日から大阪・第七藝術劇場、神戸・元町映画館にてロードショー 他全国順次
 
 2025年度には年間入館数が250万人を超えた広島平和記念資料館・・通称〝原爆資料館〟の軌跡が、『原爆資料館 語り継ぐものたち』として映画化されました。約70年前、一人の地質学者が広島の公民館に「原爆参考資料陳列室」を開いた日から今日まで。ここにはどんな歩みがあったのでしょうか。
ドイツの国際映画祭、「World Media Festivals 2026」のドキュメンタリー(歴史・伝記)部門で、先ごろ金賞を受賞した本作の、プロデューサーで共同監督でもある立川直樹さんに、お話を伺いました。
(Q)本作は、広島ホームテレビの斉藤俊幸さんと立川直樹さんの共同監督作品です。お二人は2023年に『原爆資料館 閉ざされた40分 ~検証G7サミット~』という番組を作っておられますね。これはG7の時の原爆資料館のことを描いたドキュメンタリー番組ですが、今回の映画『原爆資料館 語り継ぐものたち』は、その番組を作品の核にして、肉付けをして行かれたのでしょうか?
(立川直樹監督)「斉藤俊幸さんの方は2021年入社なので、彼の中ではあの番組が核なんですが、僕にとっては、7代目館長・高橋昭博さんや、もっと前の、初代館長さんのことなども、いつかまとめたいと思っていたので、それが制作のスタートでした。「原爆資料館 閉ざされた40分 ~検証G7広島サミット~」という番組は、1時間版と30分版の2本があり、現在YouTubeで観られますが、そっちの方は大分尖っています。
(Q)原爆資料館を描いていく上で、キーワードの一つになっているのが〝遺品〟です。学芸員さんが地下収蔵庫で遺品を指しながら「これは身分証だけが形見の人(の遺品)です」などと、言葉少なく説明されるシーンに感銘を受けました。遺品を寄贈した一般の方の言葉にも、凄いパワーがあるなと感じました。
(立川直樹監督)「本当はもっと使いたかったんですが、最小限にとどめました。本作は101分ですが、最初は2、3時間あって、泣く泣くコンパクトにして行ったんです。そもそも原爆資料館で使用されている〝キャプション〟って、ありますよね。あれは凄くドラマチックに書こうと思ったら、いくらでも書けるんですが、そうでなく淡々と事実だけを書いてあるんですよ。そういう伝え方を参考にしました。喋っている学芸員さんも、そういう喋り方が身に付いておられるんです。決して〝山場を作る〟とかじゃない。それに、取材では、寄贈された方がお話をされる場面が、凄くいっぱいあるんですよ。寄贈した方にとっては、遺品とのお別れでもあるし、悲しいですよね。毎年、よくとても貴重な場面に出会います。
もともと原爆資料館は、誰か政府の人が〝作りなさい〟と言ったわけではなく、一人の地質学者が石を拾い集めて、それが行政を動かして行きました。遺品の寄贈があり、市の職員さんが館長になりと、〝みんなで作って来た空間〟という特徴があると思います。市民が作った自律的な組織で、展示品一つ変えるにしても、話し合ってオープンにやっています。展示品についての賛否や撤去についても、今も多分、文書が見られると思うのですが、話し合いの中で決定しているところが、いい。そういう流れを作品全体として伝えたいです。」
(Q)原爆資料館は、遺品展示の仕方を時代に合わせて変えて来られました。現在の世界情勢からして、若者に戦争の実相を伝える工夫みたいなものは、ありますか?
(立川直樹監督)「若者に・・・という視点もあると思うのですが、やはり、事実を淡々としっかり伝えていくことが凄く大事なんですよ。戦争を勇ましく捉えたり、逆に悲劇性を強調して、もの凄く怖がらせる、とかもしない。原爆資料館は、博物館と一緒で学芸員さんが居ます。彼らはそこにある資料をいかに保存して、いかにメッセージをそのまま伝えていけるかを考えている人達だから、キャプションもシンプルだし、でもそのシンプルな事実に、何かを〝盛る〟のが見えたら、人は支持しないと思うんですよね。だから、今まで歴代の館長さんが紡いできた歴史を守り続けることが、大事なんじゃないかなと思いますね。それに、実は原爆資料館の展示資料は、ホームページで全部見られるんですよ。ウェブ上のミュージアムみたいな感じです。でもやっぱり、そこに行くことによって体験出来るものは、大きいんじゃないかな。更にバックグラウンドを知ると、よりリアルに伝わるんじゃないかと思います。」
(Q)本作は、人々の苦しみや悲しみを記憶する原爆資料館のドキュメンタリーですが、作りがとても独創的で魅力的です。編集はどなたですか?
(立川直樹監督)「本作はカメラマンの熊田好洋さんが編集しました。全体の画は僕と斉藤さんでブロックごとに手分けして作っています。映画祭にも出して、英語版もあります。世界には原爆についていろいろな意見がありますが、原爆とか戦争とか災害といった、人類が繰り返して来た悲劇は、もう二度と繰り返したくない、と思っている人は多いと思う。〝核兵器、無くした方がいいよね〟と同じ問題意識を抱えている人は確実に居るので、そういうのは伝わるんじゃないかな。興味深い歴史の一つだなぁ・・・という感じで観てもらっていいですし。でも出来れば、たくさんの人に向こう50年くらいは観て欲しいな、と思っています。」
「核兵器のない世界」を訴える原爆資料館を壊さず残したこと自体が、世界的大英断ですよ、と話す立川直樹監督に、気負いは一切感じられませんでした。今後も平和に関するいい作品を届けてくれそうな気がします。
(写真・文 / 岩永久美)

監督 :⻫藤俊幸/立川直樹
音楽 :石橋英子『ドライブ・マイ・カー』『悪は存在しない』
プロデューサー :立川直樹   撮影・編集 :熊田好洋
編集協力 :大重裕二   制作 :広島ホームテレビ
宣伝協力 :矢本理子  関⻄宣伝 :松井寛子(風まかせ)
配給・宣伝 :きろくびと
2025 年|日本|101 分   ©広島ホームテレビ
(ストーリー)
1955年に開館して以来、累計8000万人が訪れた広島平和記念資料館、通称〝原爆資料館〟。2万2000点を超える遺品や資料などを収蔵し、2006年には本館建物が戦後建築として初めて国の重要文化財に指定された。「もう二度と原爆の惨禍を繰り返してはならない」と原爆で溶けた瓦や石といった瓦礫を集め、市内の公民館で「原爆参考資料陳列室」を開いた地質学者・長岡省吾氏の、執念と努力によって誕生したこの空間は、歴代館長たちの信念によって引き継がれていく。2016年にはアメリカのオバマ大統領の訪問が実現。2023年にはG7サミットの開催地が広島に決定。核保有国のトップ達が原爆資料館を訪問することが決まり、関係者達は期待を寄せるが—。

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