『大統領のケーキ』
    2026年7月10日、大阪ステーションシティシネマほかで全国公開。
(松竹からの試写案内で鑑賞)
 イラク出身のハサン・ハーディ監督が、自身の子供時代の経験を下敷きに描いた、ロードムービー型の人間ドラマである。
イラク南部に住む9歳の少女ラミアは、祖母と2人暮らし。ある日小学校のくじ引きで、〝大統領の誕生日ケーキ係〟に当たってしまう。1990年代のイラクでは、国をあげて当時のサダム・フセイン大統領の誕生日を、盛大に祝う慣習があった。中でも〝誕生日ケーキ係〟に当たって、ケーキを焼いて学校に持って行くことは、子供達にとって名誉なこととされていたが、貧しい家庭に育ったラミアにとっては砂糖を買うだけでも大きな負担。折しも国連の制裁下でイラクは物資が不足し、ラミアは同じような理由で困っている友達のサイードと、協力しあうようになる。
南部の湿地帯では人々の移動手段に船が使われており、劇中のラミアも、1人で小さな船を漕いで小学校から下校していく。本作の撮影はイラクで行われ、イラク育ちのハーディ監督が、少女の動作一つひとつから、当時の生活感を引き出していた。
戦争と食糧不足のイラクでラミアが出会うのは、必ずしも善意の大人ばかりでは無い。時にすさんだ大人も現れて、危険な目にもあうのだが、ドラマはリアリティ一辺倒と言うわけではなく、子供の視点を随所に取り入れ、ブラックユーモアが散りばめられている。第78回カンヌ国際映画祭では、イラク映画として初めて 監督週間観客賞と新人監督賞(カメラ・ドール)をW受賞。ジャーナリストでもあるハーディ監督の、人への慈しみと故郷への想いが迫ってくる、おすすめの1本だ。
(2025年/105分/イラク・アメリカ・カタール合作)
配給:松竹
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