「ヴィヴァルディと私」
2026年5月22日から、シネスイッチ銀座 ユーロスペースほかで公開

 「題名のない音楽会」「クラシックTV」といった音楽番組、毎年12月には「1万人の第九」(大阪城ホール)に行ってはいても、熱心なクラシック音楽ファンというわけでもない。それでも、ヴィヴァルディの名声は知っているし、代表的な「四季」のメロディーには心が癒される。さらに、個人的には、「ヴィヴァルディ-四季-」(2023年)、「ヴィヴァルディ-四季-ドラマコンサート」(、2025年)という2つの舞台のプログラムに寄稿した〝ご縁〟もある。この2作品はヴィヴァルディと彼を育てあげた父・ジョヴァンニとの関係を軸に描かれていて、父が息子に「箔をつける」という意味もあってなのか、神学学校に入れ司祭にしたという経歴も紹介されていた。そして、実在したピエタ院という慈善院も舞台になっていた。

幸いなことに、そんな「予備知識」もあったので、いっそう興味深く観ることができた。18世紀初頭、ヴェネツィアに実在したピエタ院でヴァイオリン教師として赴任したアントニオ・ヴィヴァルディと孤児の女性・チェチリアがヴァイオリンの才能を開花させていく成長を描く物語。脚本・監督を手がけたダミアーノ・ミキエレットは、オペラ演出家として活躍。ミラノ・コルティナ冬季五輪開・閉会式でクリエイティブ・ディレクターを務めた人物で、これが長編映画監督デビュー。
有名な「四季」をはじめ、ヴィヴァルディが作曲したメロディーが随所に登場するので、クラシック音楽ファンは「必見・必聴」だが、人間ドラマとしても見ごたえがある。
 ヴィヴァルディには、ピエタ院に来るまでにもさまざまなドラマチックな半生があるのだが、どちらかというと、ヴェイバルディの指導でヴァイオリンの才能が開花していくチェチリアと彼女を取り巻く仲間たちが興味深い。

資料によると、ピエタ院など当時あった4つの孤児院の子供たちは、男子は職業訓練を受けた後、16歳で去らなければならなかった。少女たちに「3つの道」があったという。1つは修道女となるため慈善院を出る。2つ目は、求められた結婚を機に慈善院を出る。3つ目は、そのまま一生慈善院で過ごす。それ以前に、女子は10歳ごろになると、音楽の才能のある女子は厳しい音楽教育を受け、「合奏・合唱の娘たち」として祝祭日や日曜日にコンサートを開き、慈善院の収益を支えたのだった。映画には、そんなコンサートの模様も登場。彼女たちは、貴族や金持ち、いわゆるパトロンたちが集まるなかで、仮面をつけて演奏する。院を運営していくために、そうしたことを受け入れないといけない現実、貧富の差が、流麗な音楽をバックに描かれ、ひしひしと伝わってくる。一方、金持ちや地位のある男性の妻となる女性たちも、それが幸せなのか…。時空や環境は全く違うとはいうものの、歌舞伎などで描かれる日本の遊郭などがダブってきた。
 音楽の道を進みたかったチェチリアも、自分の意思とは別に「決断」を強いられる。その時に、彼女が頼ったのが「音楽の師」でヴィヴァルディ。音楽の世界では偉大な業績を残し、語り継がれる彼がとった言動は…。リアルな「人間性」が浮かび上がる。いわゆる「偉人伝」なのがいい。

〈ストーリー〉1716年、ヴェネツィアのピエタ院。赤ちゃんポストに置き去りにされたチェチリアは、母の姿も愛情も知らずにこの院で育ち、毎晩こっそりベッドから抜け出してはろうそくの灯りで、宛名のない母への手紙を綴っていた。院から出て外の世界で暮らすには、母親が迎えに来るか、貴族に見いだされ結婚するかしかなかった。結婚も貴族から院への寄付が前提で、持ちつもたれつの関係であった。そんな中、ピエタ院にアントニオ・ヴィヴァルディがヴァイオリン教師として赴任すると、卓越したヴァイオリンの技術を持つチェチリアを見出し、第一ヴァイオリンのリーダーに任命する。ヴィヴァルディからの厳しい練習に耐え、ヴァイオリンの腕があがっていくチェチリア。いつしか二人は心を通わせるようになる。そんな折、ピエタ院が決めたチェチリアの結婚相手である将校が戦争から戻り、結婚が迫ったある日、事件が起こる……。
〈キャスト〉テクラ・インソリア、ミケーレ・リオンディーノ、アンドレア・ペンナッキ
〈スタッフ〉監督・脚本・ダミアーノ・ミキエレット。原作・ティツィアーノ・スカルパ 「ヴィヴァルディと私」(河出書房新社刊/中山エツコ訳)
2025/イタリア・フランス/イタリア語/110分/1.85:1/5.1ch/原題:PRIMAVERA/映倫区分:G
字幕翻訳:関口英子
後援:イタリア文化会館 
配給:彩プロ 
🄫2025 INDIGO FILM, WARNER BROS. ENTERTAINMENT ITALIA, MOANA FILMS

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