「未来」
   2026年5月8日公開
(東宝主催の試写会にて)
 『糸』『護られなかった者たちへ』『ラーゲリより愛をこめて』など、重厚な物語を温かいタッチで描いてきた、瀬々敬久監督作品である。『告白』『ユートピア』などのミステリー作家、湊かなえの同名小説が原作。
 ドラマは複雑な過去を抱えながらも、懸命に生きる女性・真唯子の視点で語られる。彼女は高校教諭となり、クラスでいじめにあっている生徒、章子と出会う。章子は家庭が経済的に困窮しているが、そのことを外部の大人にうまく伝えられない。様々なことを察した真唯子は、教諭という立場を超えて章子に寄り添うようになる。
 二人の心温まる交流が描かれるのに並行して、真唯子の過去も描かれていく。特に、東京に引っ越して間もない頃の真唯子が、映画館に勤める青年・原田と出会うシーンは切ない。母親との断絶で沈んでいる真唯子がふと、「こんな時、おすすめの映画ありますか?」と尋ねると、原田は迷わず『東京物語』をすすめる。小津安二郎監督の『東京物語』は家族の絆を描いているのと同時に、家族というものの持つ寂しさを描いた映画でもある。真唯子はこの映画を観て、単に慰められるだけでなく、自分の経験がより俯瞰的に見えるようになっていく。原田と真唯子の恋は後の伏線で、このシーンは本作の中でも光っている。
 出演は、真唯子役に黒島結菜、章子役に山崎七海、親1人子1人の暮らしの中で娘を守る、章子の母役には『ナイトフラワー』でもシングルマザーを演じた北川景子。社会のひずみの中で起こる女性問題をミステリーとして昇華した1本である。
〈キャスト〉 黒島結菜・山崎七海・板東龍汰・細田佳央太・近藤華・松阪桃李・北川景子
〈スタッフ〉監督:瀬々敬久、脚本:加藤良太、原作:湊かなえ「未来」(双葉文庫)

(2026年/日本/130分)
配給:東京テアトル
©2026映画「未来」製作委員会 ©湊かなえ/双葉社

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