「サンキュー、チャック」
2026年5月1日公開
スティーブン・キング原作もの、と言っても、暴力や幽霊が出てくるタイプではなく、『スタンド・バイ・ミー』のようなビター・スウィート型の作品だ。
本編は、世界中で天変地異が起きている危機的状況下で始まる。ミツバチが絶滅し、山火事が広がり、行方不明者や自殺者が激増する中で「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39 年間に、ありがとう、チャック」という謎の広告が、街角の看板やラジオのCMなどであふれ出す。高校で教壇に立つマーティは、チャックとは誰のことなのかと、いぶかしむが、誰に聞いてもわからない。まさに世界の終わりが来ようとしている瞬間、何故こんな広告が町中にあふれ出すのか。ユニークな謎解きが始まる。
本作は現在と過去が少しずつ入り交じったシーンもあって、ファンタジー色の強い作品だが、冒頭のシーンだけは、コロナで緊急事態宣言が出ていた頃の、あのウツウツとした空気を思い出させてリアルだ。そして、そこでマーティは、もし今日が人生最後の日なら、別れた妻のフェリシアに会いたい、と考える。一度きりの人生、もし、これが最後なら?は、ドラマを貫く問いで、スティーブン・キングからのメッセージでもある。
チャック役は子供の頃と大人になってからで、計3人の俳優が演じているが、大人時代を演じているトム・ヒドルストンには、劇中に重要なダンスシーンがある。これは『ラ・ラ・ランド』のダンスシーンで有名なマンディ・ムーアが振り付けたもので、短い時間の中に、人生の楽しさを圧縮し、優雅で魔法に満ちていた。ドラマは3章から成るヒューマン・ミステリー。風変わりなドラマ構成自体に深い意味があり、ダンスシーンも含めマイク・フラナガン監督が、心に小さな晴れ間を広げてくれる名作である。
(2024年/111分/アメリカ)
配給:ギャガ、松竹
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監督・脚本︓マイク・フラナガン『ドクター・スリープ』
原作︓スティーヴン・キング「チャックの数奇な人生 イフ・イット・ブリーズ」(文藝春秋・2026年4月23日発売予定)
出演︓トム・ヒドルストン、キウェテル・イジョフォー、カレン・ギラン、ジェイコブ・トレンブレイ、マーク・ハミル、ミア・サラ