「オールド・オーク」
2026年4月24日公開
人種や国籍などの「違い」が争いを生み、分断が進み、紛争や戦争を引き起こす。毎日、そんなニュースが流れるなか、この映画は声高ではなく、そうした問題を訴えかけている。ケン・ローチ監督にとって、イギリスの社会保障から取り残された老人とシングルマザーを描いた「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年)。必要に応じて呼び出されて短期間の就労を行う男性を描いた「家族を想うとき』(2019年)に続く「イギリス北東部3部作」。自らが〝最後の作品〟と語っている作品で、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された。
この映画に登場するのは、イギリス北東部のある町で「オールド・オーク」というパブを営んだいる男性と、シリアから来た若い女性、そしてそこで暮らしている市井の人々とシリア難民たち。世界情勢によってシリアを離れて他国に暮らすしかない人たち、それを、地元のほとんどの人は、〝よそ者〟として受け入れない。どちらも真面目に正直に懸命に生きているのだが、衝突し「分断」する現実がある。これは、なにも特別な状況ではなく、日本でも外国人受け入れをめぐって、さまざまな問題も起こっていて、現実感がある。
主人公のTJは決して〈進歩的〉な人物ではない。シリア人女性・ヤラが訳もなく大切なカメラを壊されたことに、同じ土地に暮らす仲間の仕業と恥じたのをきっかけに交流を始める。つまり、理屈ではなく人間的な感性によって偏見を抱かない人物。人種や国籍といった「枠組」にとられてない考え方が、もっとも強く、説得力があるはずなのだが…。現実はそうはいかない。気心を知っていると思ったいたパブの常連たちは、TJから離れていき、それどころか妨害、敵対するまでになってしまう。そうした関係を象徴しているのが、妻を亡くしたTJが家族のようにかわいがっている子犬。彼をよく思わない人は、大きな犬で脅して…。「人は苦しい時に下と闘う」。劇中でTJが放つ言葉、ケン・ローチ監督たちのメッセージが、悲しいことに、いまの社会を言い当てている。
〈ストーリー〉イギリス北部のとある炭鉱の村で、最後に残ったパブとして親しまれていた人々が集い、安らぎを見出す場所だったはずのパブは、シリア難民の受け入れにより、諍いの場に変貌してしまう。オーナーのTJはパブの先行きに頭を抱えていたが、シリアから来たカメラを携えた女性ヤラと出会い、思いがけず友情を育むことに。そして喪失や未知への恐怖、希望を見つけることの難しさについて知っていくことになるが―。
〈キャスト〉デイヴ・ターナー、エブラ・マリ、クレア・ロッジャーソンほか。
〈スタッフ〉監督:ケン・ローチ。脚本:ポール・ラヴァティ。
2023/イギリス、フランス、ベルギー/英語・アラビア語/113分/カラー 原題:The Old Oak 配給:ファインフィルムズ 後援:ブリティッシュ・カウンシル © Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British