「これって生きてる?」
2026年4月17日公開
「ディズニーから試写会に招待されて、この映画を観た」
離婚をする夫婦には「口もきかない!」という仲もあれば、互いに微妙な関係性を率直に語り合う人たちもいる。この映画は全編をとおして、アレックスとテスが〝向き合い〟よく話す。愛情と葛藤、亀裂といった夫婦間の感情、出来事をことさらにドラマチックに描くのではなく、その「決断」によって希望を見出だしていく2人を、さりげなく細やかに綴っている。
監督をしているのは、「アリー/スター誕生」「マエストロ:その音楽と愛と」でアカデミー賞作品賞にノミネートされた俳優でもあるブラッドリー・クーパー。彼にとって長編監督3作目になるこの作品は、友人の実話を題材にしているという。冒頭、「家を出て行こうか?」と言う夫のアレックスに、「いまでなくていい」というように返す妻のテス。その会話だけで、シチュエーションと2人の関係性が伝わってくる。一見すると、平穏で幸せに暮らしているようなのだが、2人には鬱積したものがあったのだ。
あてどなくニューヨークの街をさまよっていたアレックスはコメディクラブに入る。小さなステージで繰り広げられていたのがスタンダップコメディ。それに魅せられ、ステージに立つことで、自分を見つめ直すようになる。ピンで立つというスタイルは日本でいうと漫談や「R~1」と同じなのだが、笑いを優先する日本のパフォーマンスではなく、スタンダップコメディは、社会への皮肉や自虐的なメッセージを笑いに包んで訴える芸。映画では、ダンスティ・ホフマンが実在した人物を演じた「レニー・ブルース」(1974年)、トム・ハンクスの「パンチライン」(1988年)などもある。ちなみに、この映画のタイトルになっている「これって生きてる?」は、スタンダップ・コメディアンになったアレックスがネタのあとに必ず放つ「決めゼリフ」(パンチライン)。一方、テスはかつて現役選手として活躍したバレーボールの世界に、コーチとして戻ることで、「自分の居所」を見つけていく。それぞれが家族や夫婦といった「内」に向いていたのが、「外」に向かっていくことで、しだいに2人の間にも変化が生まれてくる。そうした2人を軸に、親友夫妻の微妙な関係性も描かれている。その夫で俳優をしているボールズをブラッドリー・クーパー監督が演じている。役柄によって髭の長さを変えてみたり、帽子をする様子も登場し、「西部劇のテレビシリーズに、いい役で出演できそう」などと話すあたり、リアリティー、生活環が漂う。
はたして、アレックスとテスはどうなるのか? 国は違っても「〇はかすがい」という心情が伝わってきて、ほっとする。
〈ストーリー〉順調な関係だった夫婦、アレックスとテス。中年にさしかかり、置き去りにしてきた夢が2人の結婚生活を終わりに向かわせる。 失意の中、アレックスはニューヨークでふと足を運んだコメディクラブで舞台に立ち、夫婦の赤裸々な関係を“笑い”に変えていく。その先に あった思いがけない人生とは…。
〈キャスト〉ウィル・アーネット、ローラ・ダーン、アンドラ・デイ ほか
〈スタッフ〉監督・ブラッドリー・クーパー。脚本・ブラッドリー・クーパー、ウィル・アーネット、マーク・チャペル。■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ■コピーライト:©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
日刊スポーツ新聞社文化部記者を経て、1990年に独立。 新聞や雑誌などで執筆活動を続けている。主な著書には 『宝塚BOYS』 として舞台化もされた 『男たちの宝塚』 や 『宝塚 幻のラインダンス』 『少女歌劇の光~ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』ひとときの夢の跡』 (共著) 『河内家菊水丸 秘宝の舘大全集』(監修を担当)などがある。FM大阪 「おとなの文化村」 出演 (終了)、文化庁芸術祭 大衆芸能部門 (関西) 審査員を歴任。 日本映画ペンクラブ会員。 日本演劇学会会員。 なにわ名物開発研究会会員。シネマコミュニケーター講座 講師などをつとめている。