「人はなぜラブレターを書くのか」
      2026年4月17日

(東宝試写会にて) 
2000年3月8日に、帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)日比谷線で起きた、地下鉄脱線事故をもとにした人間ドラマ。『月』『本心』などの石井裕也が、監督、脚本、編集と作品全般に関わったもので、綾瀬はるかの石井作品への出演は初となる。
ドラマは古民家風カフェで働く寺田ナズナを中心に、夫や娘と絵に描いたような幸せな毎日を送っていた彼女の秘密に迫っていく。
14歳の娘が、母親のナズナにベッタリで、父の前ではふてくされているという演出が、とてもかわいらしい。「あの年頃の子のショックは大きいから・・・」と、どこかハレ物を触るような態度で娘に接するナズナの描写は、後半への伏線となり、クセのある親子関係を演じた綾瀬はるかと西川愛莉のおかげで、ドラマにはふんわりとした澄んだ空気が満ちている。
劇中では、ナズナの過去に登場する青年・富久信介の若さや、その優秀さがことさらに強調される。夫の良一が、ナズナとの間に超えられない壁を感じているらしい描写は、どこかリアルで、良一を演じた妻夫木聡が、男の寂しさみたいなものを穏やかに表現した。綾瀬はるかの不思議さは、重厚なストーリーも淡泊にサラッと演じられるところで、作品の雰囲気とも相性が良く、今回の初タッグは間違いなく成功したと言える。
 本作は、鉄道事故から約20年後にスポーツ報知が「20年後のラブレター」として報じた記事に、石井監督が心を動かされたことが映画製作の発端。オリジナル脚本が胸を打ち、事故からこの先30年、40年と時が過ぎても、忘れ去られることの無い記憶として残っていく作品である。
(2026年/日本/122分)
配給:東宝
© 2026映画「人はなぜラブレターを書くのか」製作委員会

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