「花緑青が明ける日に」
2026年3月6日公開
第76回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に正式出品された話題作。動物が話すわけでもなく、宇宙や非空間、過去・未来など日常とかけ離れた空間や時間を題材にしているのではない。アニメーションが得意分野にするそんなジャンルではなく、〝等身大〟の人物を描いている。かといって、【失われても続く未来】をテーマにしているこの映画、リアルな俳優が演じたとしても、「それなり」の作品にはなっただろうけれど、こんなワクワク感はいだかなかったかもしれない。
タイトルになっている「花緑青」(はなろくしょう)とは、燃やすと青くなる緑色の顔料。しかし、その美しさと引き換えに毒性を含むため、現在ではほとんど使用されなくな っという。それが象徴するように、淡い色彩で描かれた映像は美しく、「運命を変える花火」という設定もロマンチックなのだが、それでいて、現代社会と、そこで生きていく人々のシビアな現実がつきつけられてくる。
特徴的なのは、ノスタルジックな要素と現代性が巧みに交錯していること。主人公たちが生まれ育ったのは、老舗の花火工場。時代の流れで商売もうまくいかず、町にはソーラーパネルの建設計画が。また、町おこしのためにプロジェクトマッピングの準備も進んでいる。日本画をベースにした映像のなかに、CGアニメを挿入することで、「昔」と「今」をビジュアル的にも表現している。もう1度、「伝説も花火を打ち上げたい」と願う兄弟と彼らの幼馴染の女性。3人は強制立ち退きの日に、それを実行するのだが…。スピード感あふれる展開、ダイナミックなカット割りで盛り上がる。美しも、せつないラストだ。
〈ストーリー〉老舗の花火工場・帯刀煙火店は、町の再開発により立ち退きを迫られている。そこで育った帯刀敬太郎(萩原利久)は、蒸発した父に代わり幻の花火<シュハリ>を完成させようと独りで奮闘していた。夏の終わりの日、東京で暮らす幼馴染のカオル(古川琴音)が地元に戻ってきた。敬太郎の兄で市役所に勤める千太郎(入野自由)から立ち退き期限が明日と知らされ、4年ぶりの再会を果たす3人。失われた時間と絆を取り戻すようにぶ つかり合いながら、花火の完成と打ち上げを巡る驚きの計画を立てるのだが…。 幻の花火に託された希望と、その鍵を握る「花緑青」。火の粉が夜を照らし、新しい朝を迎えるとき、敬太郎たち が掴むそれぞれの未来とは?
〈キャスト(声)〉萩原利久 古川琴音 入野自由 岡部たかしほか、
〈スタッフ〉原作・脚本・監督:四宮義俊。キャラクターデザイン・うつした(南方研究所)、四宮義俊。作画監督・四宮義俊、浜口頌平。美術監督・四宮義俊、馬島亮子。音楽・蓮沼執太。色彩設計・四宮義俊、水野愛子、齋藤友子、岡崎菜々子。撮影監督・富崎杏奈。特殊映像・SUKIMAKI ANIMATION。ストップモーション映像・Victor Haegelin。CGディレクター・佐々木康太郎。編集・内田恵。音響監督・清水洋史。録音・調整・太田泰明。音響効果・中野勝博。音響制作・東北新社。アニメーションプロデューサー・藤尾勉。製作・A NEW DAWN Film Partners。制作・アスミック・エース/スタジオアウトリガー/Miyu Productions。配給・アスミック・エース。
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