「てっぺんの向こうにあなたがいる」
2025年10月31日公開
『どついたるねん』『顔』『闇の子供たち』『エルネスト』『せかいのおきく』など様々なタイプの作品を撮って来た阪本順治監督の最新作は、エベレストをはじめ、七大陸最高峰を制覇した登山家・田部井淳子の半生を描いた人間ドラマだ。
物語は1975年に女子登山クラブの仲間達が、エベレスト登頂の遠征費集めに奔走した時期からスタートする。主人公の多部純子(のんと吉永小百合のダブルキャスト)は仲間達と出資を頼みに行くが、女性だけの登山計画に飛びつく企業は少ない。当時、純子のように結婚して子供も居る女性が登山家として活動する姿は、多くの女性を励ましてもいたが、企業トップなどからの反応は正反対で、馬鹿にされることが多かったのだ。シナリオはそんな70年代の日本の風潮を活写しながら、純子と新聞記者・悦子の固い友情を描き、更に見る者の視線を、純子と息子の関係性へと誘導する。
女性として世界初のエベレスト登頂を果たした人物の映画なのだが、阪本監督は主人公・純子が、距離が出来てしまった息子との関係を修復していく後半にボリュームを持たせている。カッコいいところばかりではなく、仕事と人生に普通に悩んで、ベストを模索していた主人公の姿はリアルだ。シナリオには『銀河鉄道の父』など実写映画のほか、アニメのシナリオも手掛けてきた坂口理子が起用されている。阪本監督は「思春期の人達にも観て欲しい」と語っているが、冗長にならない台詞まわしが〝女性の偉人伝〟に新しい風を吹き込んでいる。助演に天海祐希、佐藤浩市。原案は田部井淳子の『人生、山あり〝時々〟谷あり』。
(2025年/130分/日本)
配給:キノフィルムズ
©2025「てっぺんの向こうにあなたがいる』製作委員会

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