「ローズ家 ~崖っぷちの夫婦~」
2025年10月24日公開
(ディズニーの試写会にて)
映画のラストは知りたくないものだが、本作は離婚を題材にした80年代のメジャー作品『ローズ家の戦争』の再映画化で、あらかじめ結婚の崩壊がラストに来ることがわかっている、という作品だ。試写会で見た時、お互いに優れた能力を持った夫婦が相手の真の姿を知って・・・というスリリングな展開から、本家本元の『ローズ家の戦争』よりむしろ、アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピット共演の『Mr.&Mrs.スミス』を連想してしまった。
時代は現代。建築家のテオ(ベネディクト・カンバーバッチ)とシェフのアイビー(オリヴィア・コールマン)はイギリスで結婚して、アメリカに移住した。テオとアイビーのローズ夫妻は子育てをしながら暮らしていたが、あることをきっかけに2人の間に緊張感が走る。
80年代の物語を今に置きかえているので、夫婦仲が悪くなるきっかけがSNSであったり、ローズ夫妻とアメリカの友人達との間に文化的ギャップも現代的だったり。監督が『オースティン・パワーズ』や『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のジェイ・ローチで、コメディとシリアスの両刀遣いであるのに加えて、シナリオが『哀れなるものたち』のトニー・マクナマラなので、ブラックユーモアを含んだ娯楽劇に仕上がっている。
アイビー役のオリヴィア・コールマンはアカデミー賞主演女優賞を受賞しているイギリスの大物俳優。テオ役のベネディクト・カンバーバッチもBBCシリーズでプライムタイム・エミー賞を受賞するなど大活躍のイギリスの大物俳優。今回はともに本作のエグゼクティブ・プロデューサーを買って出ていて、劇中では火花を散らしながらも仕事においては十分に協力し合っている感じが水面下にある。
夫婦を形容するのによく〝円満な〟という言葉を使うが、実際は夫婦のどちらかが我慢をすることで、円満に見えているケースが多いのではないだろうか。本作では、アイビーが子育ての為に一時期、自分の仕事をセーブしてきたという設定の中に、その要素がある。しかし、本作ではワケあって夫のテオが熱心に子供に関わり始めるので、観ていてかなりイーブンな印象があった。撮影中もスタッフの中でアイビー派とテオ派がくっきりと分かれたというが、さて、日本の観客はどう受け止めるだろうか。
(2025年/1時間45分/アメリカ・イギリス)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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