「てっぺんの向こうにあなたがいる」
2025年10月31日公開
吉永小百合、天海祐希、阪本順治監督 合同記者会見
2025年10月17日開催
吉永小百合、124本目の映画出演となる「てっぺんの向こうにあなたがいる」。吉永、天海祐希、阪本順治監督が公開に先駆けて17日、大阪で合同記者会見を行った。吉永にとって、阪本監督作品は「北のカナリア」に続いて2作目。天海とは「最高の人生の見つけ方」から6年ぶりの共演とあって、なごやかな雰囲気で3人は作品について話した。
吉永が演じる多部純子は、いまから50年前、女性初のエベレスト登頂に成功した田部井淳子をモデルにした人物で、劇中には登山をするシーンも登場する。吉永は「20代の頃、ちょっとした『山ガール』で、山に登ることが大好きだったんですけれども、そのうちに登るのが辛くなって、スキーに転向してしまってはほとんど登っていなかったんです。 2012年に田部井さんにお会いして、すっかり魅了されて。そしてこのような形で田部井さんをモデルにした作品に出られたこと、大変嬉しく思っております」と冒頭に挨拶をした。続いて、天海は「小百合さんの盟友・北山悦子という役で、またご一緒させていただけるならと思って出演しまた」。阪本監督は「13年前にも大阪で吉永さんと会見(「北のカナリア」)をして、もう1度、同じような場所にいられることは幸せです。私の作品の主演級はほとんど男衆なので女優2人と会見に臨むのは初めてです。お2人には可愛がってもらいました(笑い)。
そして、撮影中、印象に残った出来事は?という質問に、3人はそれぞれこう答えた。
阪本「エンディングに向かって、富士山での撮影が始まったのですが、その頃は猛暑で、海側の海面温度はすぐ上昇して、早い時間にもうガスってしまい、もうこれは4日目に奇跡を狙うしかないということになりました。朝 4時に出発して登り始めて、映画に出てくるような素晴らしいシーンを撮ることができました」。
天海「吉永さんと一緒に山を登るシーンで、歩いた丘が『吉永の丘』と小百合さんにちなんでつけられた場所だったんです。人生って山登り、何があっても、一歩一歩ゆっくりと歩いていくんだっていうメッセージをもらったような気がしました」。
吉永「私もあの丘の景色のすばらしさと空気のおいしさがとても印象に残っています。それと私が歌うシーンがあるのですが、天海さんが撮影を終えられているのに、ずっとステージの脇で。私が演じてる歌ってるところを見ていてくださったんです。
本当に感謝感謝感謝です」。
吉永と映画のモデルになった田部井との出会いは2012年、吉永が担当してるラジオ番組にゲストとして田部井が出演した時だった。「登山家と紹介したら、『私は登山愛好者です』おっしゃって。とても謙虚で、大ファンになりました。演じるにあたっては、『病気になっても病人にはならない』と前に進んでいく姿をしっかり表現したいと思いました」。また、その時に吉永が強く印象に残っているのは、田部井の耳にあったピアス。今回、演じるにあたって、生涯で初めて耳に「穴」をあけたのだった。「10年ぐらい前に開けてみたいなと思ってたんですけど、勇気がなくてダメだったんですね。
でもは今回、田部井淳子になるだと思って。開けます!って自分で決めたんです。監督には『3か所くらいしか目立つと場面がないですよ。大丈夫ですか?』と言われたのですが、そこは〝女は度胸〟でやりました。ただ、ドクターに『1カ月はプールに入ってはだめだ』と言われたのはつらかったですけど」とほほ笑んだ。
映画では、青年期の純子を、のんが演じている。阪本監督は「のんさんと吉永さんには、田部井さんの書物から印象的だった言葉を箇条書きお渡ししました。『利発、豪放磊落、言い訳しない、おてんば』など僕の感じたキワードで、そこから外れないようにして演じてもらいました。のんさんをキャスティングしたのは、自在に生きてるっていう印象が、田部井さんに通じるところがあるし、吉永さんデビュー当時の写真集を見るとソックリだと思ったので。のんさんは、吉永さんが演じる撮影現場を見学にこられてリズムをつかもうとしていました」という。
一方、天海が演じる悦子も実在した田部井の盟友がモデル。「悦子は、キラキラしたものをキラキラしものをひけらかすでもなく自分の中に秘めている純子さんが大好きなんです。そういう思いが私自身の小百合さんに対する思いと、すごくリンクしていて、こういうふうに芝居しようというのではなく、自然に出ていると思います」
ゆっくりとした口調の吉永、ジョークを交えて歯切れのいいトークの天海、クールに2人を分析する阪本監督。まさに、3人の個性が調和した会見だった。
〈ストーリー〉1975 年、エベレスト山頂に向かう1人の女性の姿。一歩一歩着実に山頂(てっぺん)に向かっていくその者の名前は多部純子。日本時間 16 時 30 分、純子は女性として初の世界最高峰制覇を果たした。しかしその世界中を驚かせた輝かしい偉業は純子に、その友人や家族たちに光を与えると共に深 い影も落とした。晩年においては、余命宣告を受けながらも「苦しい時こそ笑う」と家族や友人、周囲をその朗らかな笑顔で巻き込みながら、人生をかけて山へ 挑み続けた。登山家として、母として、妻として、一人の人間として…。 純子が、最後に「てっぺん」の向こうに見たものとは―。
〈キャスト〉吉永小百合、のん、木村文乃、若葉竜也、工藤阿須加、茅島みずき、円井わん、安藤輪子、中井千聖、和田光沙、天海祐希、佐藤浩市
〈スタッフ〉 監督・阪本順治。脚本・坂口理子。音楽・安川午朗。原案・田部井淳子「人生、山あり“時々”谷あり」(潮出版社)。製作総指揮・木下直哉。製作・「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会、木下グループ、朝日新聞社、読売新聞社、報知新聞社。制作プロダクション:キノフィルムズ、ドラゴンフライ。配給・キノフィルムズ。協力・一般社団法人 田部井淳子基金 ©2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会