「木の上の軍隊」
    2025年6月13日 沖縄先行公開
       7月25日(金) 全国公開
1945年の沖縄県伊江島を舞台にした戦争映画。終戦を知らずに2年間ガジュマルの木の上に隠れて生き延びた2人の日本兵が描かれている。実話を基にした井上ひさし原案の同名舞台劇の映画化。
 第二次大戦末期の沖縄県伊江島。激しい戦闘の末に森の中に逃げ延びた少尉の山下一雄と新兵の安慶名セイジュンは、米兵に見つからないように大木の上に身を隠す。樹上に隠れる生活は2年に及ぶが、その間外部からの情報は入らず、2人は戦争が終わったことも日本が負けたことも知らなかった。
 こまつ座の舞台劇は随所に抽象化があるため、観客には想像の余地がたくさんあったが、本作は映画の特色を存分に発揮していて、より具体的な映像で激戦の様子が描かれている。ここで観客は一旦想像の余地を奪われるが、着目すべきは映画のもう一つの特色である。クローズアップとモンタージュで、山下少尉を演じる堤真一の存在が拡大され、軍隊上位の階級に居る兵士の心理が描かれていく。少尉が新兵に要求することの水準は高く、結果的に安慶名は戦争が終わっても上官に振り回される。
 地元出身の安慶名は生きるための食べ物を調達する術を知っているから、本来、木の上の2人の立場はいつ逆転してもおかしくない。にもかかわらず2人のパワーバランスは変わらず、このどうしょうもない構図の中に、沖縄戦での本土と沖縄の関係性が重なっていく。脚本と監督の平一紘は「木の上の軍隊」のモデルとなった佐次田秀順氏と山口静雄氏の家族にも取材し脚本に生かしたと言う。安慶名セイジュン役には『キングダム 運命の炎』『ゴジラ-1.0』などの山田裕貴。敵の軍隊から逃げた先で軍隊の構造的なトラップにはまる新兵の奮起を、体当たりで演じている。
(2025/日本/128分)
配給 ハピネットファントム・スタジオ
©2025「木の上の軍隊」製作委員会 

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