「カーテンコールの灯」

2025年6月27日公開

不器用な中年のおじさんが、シェイクスピア演劇に挑戦。演じるのは「マクベス」?「オセロ」?}それとも「リア王」?と思いめぐらせていると、なんと「ロミオ」。映画でも舞台でも美青年が演じるキャラクターを演じるというので、コメディかと思っていたら、これが泣かせる!
ふだんは物静かに淡々と建設現場で働いているが、突然にキレることがある主人公のダン。思春期の娘は学校で問題を起こし、妻はそんな家庭の平穏を願っている。どこにでもあるような一家だが、そうした様子、描写になにか「抱えきれないような悩み」を抱いていることをうかがわせる。3人家族を演じているのは本当に夫婦、親子だそう。もちろん、劇中の設定はフィクションで演技なのだが、そこには遠慮のない対立と交流が漂ってくる。
そんなダンの様子を見て、女優(ドリー・デ・レオン)が素人劇団へ誘い、彼女が演じるジュリエットの相手役をつとめることになる。「ロミオとジュリエット」を知らないダンは娘にストーリーを教えてもらい、一緒に映画を観るシーンも。私などはレナード・ホワイティングとオリビア・ハッセーの映画(1968年)だが、レオナルド・デュカプリオ版(1997年)とは、やはり時代の流れか。
そこから彼や仲間たちの「迷演技」からてんやわんやの「初舞台」へ…と想像していたら、この映画はちょっと違う。みんなが表現力豊かで個性的。日本のオジサン、オバサンならこうはいかないだろう、とある意味でちょっと期待外れ、ダンもまた、それなりに上達していく。しかし、どうしても演じられないのが、有名なラストシーン。この〈すれ違いの悲劇〉が、この映画、家族の抱える問題の謎解きになり、現実とダブってくる。主人公がロミオを演じるからこそ意味がある、巧な脚本。ここで演じた「ロミオとジュリエット」は、悲劇ではなかった。
〈ストーリー〉アメリカの郊外。建設作業員のダンは家族に起きた悲劇から立ち直れずに、仲が良かった妻や思春期の娘とすれ違いの日々を送っていた。ある日、見知らぬ女性に声をかけられ、強引にアマチュア劇団の「ロミオとジュリエット」に参加することに。経験もなく、最初は乗り気でなかったダンも、個性豊かな団員と過ごすうちに居場所を見出していく。やがて突然の変更でロミオ役に大抜擢されるが、自身のつらい経験が重なって次第に演じることができなくなる。
〈キャスト〉キース・カプフェラー、キャサリン・マレン・カプフェラー 、タラ・マレン、ドリー・デ・レオン。
〈スタッフ〉監督・ケリー・オサリヴァン、アレックス・トンプソン

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