「第十回あべの歌舞伎 晴の会 夏祭浪花鑑」
2025年8月1日~4日
近鉄アート館
記者会見 2025年6月27日開催
映画「国宝」が大ヒット、ファンだけでなく「これまで、あまり観たことがない」という人も巻き込んで、歌舞伎ブームが起こっている。そこでも描かれたように、いわゆる「名門」に生まれ芸を磨いている歌舞伎俳優がいるが、一方でそうではない環境から歌舞伎の世界で飛び込み舞台に立つ人たちがいる。
国立劇場では研修生を募り育成しているが、かつては関西を拠点に松竹が1997年に「上方歌舞塾」を立ち上げ、数多くの塾生が歌舞伎俳優になっていった。その第1期生だった片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎の3人が中心になって結成されたのが「晴の会」。指導にあたっていた片岡秀太郎が「晴」(はれ)をあえて「晴」(そら)と読ませて命名、近鉄アート館(大阪市阿倍野区)を拠点に2015年、第1回公演が上演されたのだった。
それから11年、第10回公演(2021年はコロナ禍のため公演なし)を迎え、出演者たちが並んでの記者会見を行った。記念すべき公演に選んだ演目は、名作といわれる「夏祭浪花鑑」(なつまつりなにわかがみ)(原作・並木千柳・三好松洛・武田小出雲)。会見席上、ビデオコメントでそれぞれが想いを話した。
◇片岡松十郎
団七九郎兵衛を演じます。「夏祭浪花鑑」はずっとやりたいなと思っていた演目で、みなさんの持っている団七のイメージを崩したくないというプレッシャーがあります。また、「おちょやん」(NHKテレビ小説)でも、自分が希望を出して「泥場」をやらせてもらうなど、隙があればやりたいあこがれの役。「上方歌舞伎会」で1度、この役をやらせていただきましたが、師匠(片岡仁左衛門)は、「[泥場]」が大切や」とこれを中心に稽古をしていただいたことがあります。チームワークよく観ていただきたいと思っています。
◇片岡千壽
第1回のことを思い出します、それが10回でここのいるのが不思議です。その間に最も大きな出来事は師匠(片岡秀太郎=年没)がいなくなったことですが、教えを胸に続けてきました。今回は徳兵衛女房と仲買おくら婆の2役を演じます。おくら婆は原作には出てこない役で、おもしろい役どころで対照的な役を演じます。また、空いている時間はできることは裏の手伝いも全部やりたいと思っています。私たちにとっては、まさに「夏祭」です。
◇片岡千次郎
一寸徳兵衛と三河屋義平次で、二枚目と強欲の爺を演じます。通し狂言で1人がこの2役を演じる記録はありません。早変わり、段取りにおわることなく性根をしっかり掴んでつとめます。また、関西在住のメンバーだけでこれを上演できることに大きな意味があると思っています。
「亀屋東斎」という名で改訂を担当しています。最近は「鳥居前」「三婦内」「長町裏」の3場だけを上演することが多いのですが、片岡仁左衛門さんにご相談したところ、ドラマを深くわかっていただくため、通し狂言で上演することになりました。1986年に「第1回関西で歌舞伎を育てる会」で十三代目片岡仁左衛門さんが監修され、師匠(片岡我當)が団七をつとめた通し狂言の台本を基に構成。それに発端である「堺お鯛茶屋」も加え、3時間半にまとめます。団七と義平次による立ち回り「泥場」は、この劇場の〈不思議な装置〉を生かして、泥も本水も使います。
◇坂東竹之助 初めての参加、とても嬉しいのとプレッシャーの両方です。三婦女房おつぎは、師匠(坂東竹三郎)がよくやっていた役で、師匠の声が聞こえるような気がします。
◇片岡當吉郎 釣舟三婦を演じます。はおおらかな年上の役ですが、がたいだけではなく、心も大きく演じたいと思っています。
◇片岡千太郎 第1回、2回を師匠(片岡秀太郎)の横で舞台を拝見し、細かい教えをいただきました。今回は下剃三吉と道具屋娘お仲と、初めて同じ演目で初めて男女2役を演じます。
◇片岡當史弥 第2回目の後見から参加。団七の女房、お梶を演じます、普段の公演では住吉鳥居前と泥の場ですが、おたいじゃやから田島町まと出番が多い役をつとめます。
〈ビデオでのコメント〉
◇片岡りき彌 第1回目から参加。傾城琴浦を演じます。磯之丞役の翫政さんと上方歌舞伎らしく、じゃらじゃらといちゃつきたいと思っています。
◇中村翫政 第3回から参加。今回は上方のぼんぼんの代表格とも言える玉島磯之丞を演じます。
◇中村鴈大 昨年に続いて2回目の参加、大鳥佐賀右衛門を懸命につとめます。
◇片岡愛治郎 この演目を観て歌舞伎役者を目指し、師匠(片岡愛之助)の元に入らせていただきたいと思った思い出の深いもの。なまこの八をしっかり演じます。
〈あらすじ〉和泉国、浜田家に仕える玉島兵太夫の子息磯之丞は、 恋人の傾城琴浦と堺の廓で遊び呆けている。 そこへ、 団七九郎兵衛の女房お梶が現れ、 磯之丞をいさめるために一計を案じる。 実は団七は、 喧嘩のはずみで相手に大傷を負わせてしまい入牢。 死罪をも危ぶまれる夫の身を救いたさに、 お梶は旧恩ある兵太夫を頼っていた。 お梶の心に感じ入った兵太夫はお上へ取り成し、 団七は無事ご赦免となる。牢から出た団七は、 住吉大社の境内で女房や倅市松、 老侠客の釣舟三婦と再会。そして、お情けを頂いた兵太夫へ深く感謝し、 放蕩が過ぎて勘当され、 大坂の街を流浪する子息磯之丞の身を守ることを、 義兄弟となった一寸徳兵衛と共に固く誓うのだった。また、 徳兵衛の女房お辰も、 玉島家へご恩のある身。 磯之丞を守るために男勝りの心意気を見せる。磯之丞は、 内本町の道具屋の手代に身をやつしますが、慣れぬ商いの最中に悪者たちと一悶着・。
一方、大鳥佐賀右衛門は惚れ込んでいた琴浦を何とか我が物しようと悪巧み。 金に目のない強欲爺の三河屋義平次 (団七の舅) を使って、まんまと琴浦をさらい出す。 それを知った団七は必死に義平次を止め、 揉め合いとなった末、ついに長町裏で惨事が起きてしまう。「悪い人でも舅は親・・・」 親殺しの大罪を犯した団七を何とか救おうと、 徳兵衛と三婦は心を砕くのだった。
〈出演〉片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、坂東竹之助、片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政、片岡千太郎、片岡佑次郎、中村鴈大、片岡當史弥、片岡愛治郎
〈監修・指導〉片岡仁左衛門。〈演出〉山村友五郎。〈改訂〉亀屋東斎
前売8500円、当日9000円、高校生以下1000円
(写真)片岡千次郎、片岡千壽、片岡松十郎(前列左から)、片岡當史弥、坂東竹之助、片岡當吉郎、片岡千太郎(後列左から)。