「父と僕の終わらない歌」
2025年5月23日(金)全国公開
(TOHOマーケティング(株)主催の試写会にて)
2016年に80歳でCDデビューした実在の人物、テッド・マクダーモットを息子の視点から描いた作品。ドラマの舞台をイギリスから、日本の横浜に置き換えての映画化である。
若い頃、プロ歌手を目指すも、夢を諦めて楽器店経営者となった間宮哲太。今は趣味として地元のステージで歌う陽気な哲太だったが、ある日アルツハイマー型認知症と診断される。父の病気を知った息子の雄太は心配して実家に戻り、父を助けるようになるのだが・・・。
アルツハイマー型認知症と言う病名はよく知られているが、実際にどんな症状が特徴的なのかを知る機会は、意外と少ない。本作は、その闘病の苦しさをリアルに捉える一方で、患者の生活の質が維持されるところを描いており、観る者を励ます不思議な力を持っている。
劇中では「What Now My Love」「Love Me Tender」など5曲を、哲太役の寺尾聰が唄って、演奏。闘病の日々には、辛い出来事もたくさん起こるのだが、共通の趣味である音楽が2人の心をしっかりと繋いでいく。闘病中の父を助けるということは、とりもなおさず、父と同居する母を助けるということだ。雄太の豊かな人間性が伝わって来るシナリオは、人間同士の柔らかな関係性を浮き彫りにして、じんわりと胸に沁みる。
作品の要になっているのは、今回が16年ぶりの映画主演となる寺尾聰。本作では音楽と演技の両面でその実力を披露し、息子役の松坂桃季が主役の存在感を際立たせた。映画原案は、サイモン・マクダーモットのノンフィクション。監督は「ちはやふる」シリーズ3部作の小泉徳宏。
(2024年/日本/93分)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
©2025「父と僕の終わらない歌」製作委員会