「サブスタンス」
2025年5月16日公開
すさまじい「女優魂」を観た! デミ・ムーアがここまでやるのか!?と思うほど体当たりの演技を披露。その〝鬼迫〟がそのまま作品にぶつけられている。その意志が高く評価されて、ムーアはゴールデングロープ主演女優賞を受賞。アメリカでは「デミッセンス」(デミ・ムーアのルネッサンス)という造語が飛び交っているともいう。
頂点ののぼりつめた人物が、心ならずも次世代にその座を譲る。こうした図式は世間一般にもよくあることだが、それがエンタテインメントの世界、それも「美と若さ」がいまでも大きな要素でもある女優の場合はさらにドラマチック。これまでにも例えば、映画「イヴの総て」(1950年公開)やそれをミュージカル化した「アプローズ」(1970年初演)、また、映画「42番街」(1933年公開)からのミュージカル「42ndストリート」などで描かれてきた。この映画もその流れをくむものには間違いないが、そこにSF、ホラーの要素をたっぷりと盛り込み。文字通り肉体をアップデートに改造する再生医療の痛さ、美を追求するあまりに目を覆いたくもなる酷さがひしひしと伝わってくる。
正直、ムーアがよくこの役を引き受けたなとさえ思う。「セント・エルモス・ファイアー」(1985年)、「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990年)などでの清純なイメージ、「G.I.ジェーン」(1997年)のボーイッシュなスタイルも魅力的だった。しかし、彼女も同時代のスター女優たちと同じように、作品の立ち位置が変わっていく現実があった、そんなかでの起死回生のチャンスを見事にものにしたのだ。これからこの映画を観るムーア・ファンはちょっと(かなり?)覚悟をもつことを勧める。もう一方の〝自分〟を演じているマーガレット・クアリーは、いま上り坂を駆け上がりつつある女優。彼女もまた、この映画に体当たりでチャレンジしている。
デニス・クエイドが演じる「テレビ映り」だけを重要視するプロデューサーなど、現代とはちょっとかけ離れてステレオタイプなのは気になるが、ムーアの女優としての根性は一見の価値がある。
〈キャスト〉デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイドほか
〈スタッフ〉監督・脚本:コラリー・ファルジャ
配給:ギャガ 映倫区分:R15+ ©2024 UNIVERSAL STUDIOS 原題:The Substance/イギリス・フランス/142分/R-15

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