「屋根の上のヴァイオリン弾き」

2025年3月7日~29日  明治座
4月5日、6日   オーバード・ホール 大ホール
4月11日~13日 愛知県芸術劇場
4月19日、20日 富士市文化会館ロゼシアター大ホール
4月24日~27日 梅田芸術劇場メインホール
5月3日、4日   上野学園ホール
5月9日~18日  博多座
5月24日、25日 名取市文化会館 大ホール
5月31日、6月1日 ウェスタ川越 大ホール

私にとってのこの〈作品史〉を振り返ると1978年に梅田コマ劇場で観た森繁久彌がテヴィエを演じたバージョンから、西田敏行バージョン、そして2004年からの市村正親バージョンと大阪で上演されるたびに、観てきた(残念ながら、上条恒彦バージョンは未見)。多くの作品もそうであるように、同じ内容であっても舞台上の完成度はもちろんのこと、観る側の環境、周囲の状況で、毎回違った感想を抱くもの。
2025年4月25日に観劇(梅田芸術劇場メインホール)した今回は、そんなことをより強く思った。というのは、1905年の1905年 帝政ロシアの時代に小さな村で暮らしていたユダヤ人家族の物語が、いまの世界情勢と重なっているからだ。これまでは、「ミュージカルの名作」という観点だったのが、それだけではなく悲しみと憤りさえも感じたのだった。「いま上演」するものとして、作り手側もそれを反映、セリフで放つ「キエフ」という地名が「キーウ」と変更されていたのが象徴的だった。
私が好きなのは、家父長という家族スタイルが、よくも悪くも自分が生まれ育った20世紀の日本の家庭とダブってくるからでもある。まして、日本初演に主演した森繁は、テレビ「七人の孫」や舞台「佐渡島他吉の生涯」などで、そうした男性像を演じていた。1978年、ほとんど初めて観たミュージカルが、とても身近に感じたは「翻訳もの」の色合いが思っていたよりも淡かったのが幸いしたのだった。
そんな視点で観ると、市村テヴィエは「圧倒的に頼もしい父親像」ではなく、けっこうものわかりよく、妻に弱いという現代的な父親像」を体現している。そのぶん、娘の要望に折れる瞬間のメリハリがあまり際立つことがないように気がした。名曲「サンライズ・サンセット」を歌う長女の結婚式、シベリアへ旅立つ二女との駅でも別れなどは、やはり泣けた。
ロシアに追われ世界へ離散するユダヤ人たち。多くの人がエルサレムへ向かった「その後」にも、安住しようとする人々とそのために苦しむ人々もいて…。いまさながら、このミュージカルの持つ奥深さ、リアリティーを再認識したのだった。

※ちなみに、1971年に公開されて映画「屋根の上のバイオリン弾き」の魅力を辿った「屋根の上のバイオリン弾き物語」というドキュメンタリー映画がある。このブログでも紹介している(2023年4月20日にアップ)。現在は、Amzon Prime U-NEXTで観ることができる。

〈ストーリー〉1905年 帝政ロシアの時代、アナテフカという寒村で酪農業を営むお人好しで働き者のテヴィエ (市村正親)は妻のゴールデ(鳳蘭)、5人の娘たちと、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。長女のツァイテル(美弥るりか)、次女のホーデル (唯月ふうか)、三女のチャヴァ (大森未来衣) ら年頃の娘たちの今の最大の関心事だが、ユダヤの厳格な戒律と“しきたり”に倣い、両親の祝福が無ければ結婚は許されない。
そんなある日、 金持ちで肉屋のラザール(今井清隆) からツァイテルを後妻に迎えたいと申し出を受けたテヴィエは、酔った勢いでついつい結婚に同意してしまう。 長女の結婚相手が見つかったことで妻のゴールデも大いに喜んだが、当のツァイテル本人には仕立屋のモーテル (上口耕平) という相思相愛の存在があった。 ツァイテルとモーテルの熱意に心を動かされたテヴィエは、ついに2人の結婚に同意する。さらには、次女ホーデルは革命を志す学生のバーチック (内藤大希) を追ってシベリアへ旅立ち、三女のチャヴァはロシア人学生のフョートカ (神田恭兵) と結婚したいと言い出し駆け落ち同然で家を飛び出す。 そしてテヴィエー家にも、革命の足音と共に、故郷を追われる日が刻々と迫っていた…。
〈キャスト〉市村正親、鳳蘭、美弥るりか、唯月ふうか、大森未来衣、上口耕平、内藤大希、神田恭兵、今井清隆
〈スタッフ〉台本:ジョセフ・スタイン/音楽:ジェリー・ボック/ 作詞: シェルドン・ハーニック/オリジナルプロダクション演出・振付: ジェローム・ロビンス翻訳:倉橋 健/ 訳詞: 滝弘太郎・若谷和子/日本版振付:真島茂樹/ 日本版演出: 寺崎秀臣田中直樹/ 照明:塚本 悟/音響:本間俊哉/衣裳: 大戸美貴 / 音楽監督:八幡 茂/音楽監督・指揮:塩田明弘/指揮: 田尻真高/振付補: 日比野啓一/歌唱指導: ちあきしん・板垣治/稽古ピアノ: 宇賀村直佳・若林優美/オーケストラ:東宝ミュージック、ダット・ミュージック/振付助手:下道純一/演出助手: 時枝正俊/舞台監督: 荒智司・伊藤謙二/制作助手: 新子里奈/制作: 村上奈実/プロデューサー:斉藤安彦・塚田淳一龍貴大/製作: 東宝

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