「104歳、哲代さんのひとり暮らし」
    2025年4月18日から京都シネマ、 4月19日から第七藝術劇場、元町映画館で公開。

広島県尾道市。静かな山間の町で暮らす石井哲代さんを描いたドキュメンタリー映画だ。夫に先立たれた後、姪や近所の人たちと交流しながら、1人で一軒家に暮らす哲代さんの、101歳から104歳までの3年間を捉えている。「中国新聞」の記事ですでに地元で話題になっていた哲代さんを、山本和宏監督がテレビ番組のために取材したのが、そもそもの出発点だという。
庭の雑草を摘み、自分のためにご飯を作り、姪や近所の人たちとのお喋りを楽しむ毎日。味噌汁で使った、いりこをまるごと食べるシーンや、手に馴染んだ古い台所道具を使う姿や、ユーモア溢れる哲代さんが、淡々と描かれている。
哲代さんは小学校の教員を務めた後、民生委員を務めた経験があり、地域社会にも生きている。彼女は、近隣の女性が集まる「中野仲よしクラブ」でも中心的人物だが、さすがにもう万全の体調ではない。
“1人暮らしだけど1人じゃない”という思想が、哲代さんにはあるし、映画を観ていると、その言葉の意味がわかる。だが、この作品の本当の魅力は、スーパーウーマンを描いているところではなく、スーパーウーマンの裏側を見せてくれるところだろう。103歳になった哲代さんが2週間の入院の後、自宅に戻って来るシーンと、介護保険がカバーできないことを、哲代さんの周りの人がやっているシーンがそれだ。
カメラは、哲代さんと長い時間を過ごし、彼女の日常と人間関係、そしてなによりそのキャラクターを活写する。哲代さんの健康長寿の秘密は誰にもわからないが、磁石みたいな性格の中にヒントはありそうだ。本作は先行公開された地元広島で大ヒットしたが、ひょっとしたらアジア全域で競争力を持つのではないだろうか。哲代さんに笑わされたと思ったらホロッと泣かされ・・・。戦中戦後を生きてきた哲代さんの生活感を知るだけでも、楽しく勉強できる作品である。ナレーションはリリー・フランキー。
(2024年/94分/日本)
配給 リガード
©「104歳、哲代さんのひとり暮らし」製作委員会

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