「アンジーのBARで逢いましょう」
2025年4月4日から全国公開
大阪ステーションシティシネマ/なんばパークスシネマ/MOVIX京都/kino cinema 神戸国際/OSシネマズミント神戸、ほか
長生きが〝普通〟のようになってきた日本。私の周りでも、「ラジオ番組のパーソナリティーを続ける人」「元・舞台俳優で、いまも毎日ピアノでベートーベンの『月光』を練習する人」「元・新聞記者で交流のあった俳優たちの思い出を本に綴り、毎晩の晩酌を楽しむ人」など90歳代の元気な男性がいる。そのうち、元・新聞記者の大先輩とはつい先日に呑んだのだが、酒量、記憶力がいまも変わらないのに驚いた。
この映画は、そうした世代で輝き続けている草笛光子が主演している。4年前に放送された「その女、ジルバ」(映画「その男、ゾルバ」のもじり)でもおしゃれなスナックのママを演じていたが、ここでは「バーの経営者」という役柄。
キューポラ(?)のある街にやって来たアンジー。自ら「お尋ね者」という彼女だが、近くの店の人々や店の改装を手伝う男たちが、自由に生きている彼女に惹かれていく。おしゃれな風貌から、「年齢不詳?」とさえ思える彼女の口から、「力道山と食事をしたのよ」とか「浪曲は(初代)京山幸枝若がいい」といったことが飛び出す。そこから、年齢をはじめ、そうとうの人生経験、生き抜くしたたかさ、インテリゼンスを感じさせていく。
また、世間を騒がせている特殊詐欺といえば、年下が高齢者を騙すというのがほとんどのなか、その反対をいくような事件は描かれている。このあたりは、もう少し、その手口、いきさつを知りたかった。そんな事件もあるものの、大きな出来事はなく、ほとんどは人と人との交流を綴っている。ということもあって、隣に誰が住んでいるかも知らないというせちがらい世の中で、これはまるで「おとぎ話」のような物語。この後も、「寅さん」のように、アンジーの放浪する様子がみてみたい気にさせる映画だった。
〈ストーリー〉ある街に風に吹かれてアンジーがやって来た。いわくつきの物件を借り、そこにBARを開くという。 色々な問題を胸に抱えながら日々を懸命に生きる街の人たちは、アンジーと出会い、他人に左右されない凛とした生きざまに触れて、まるで魔法にかけられたかのように“自分らしく” 変わっていく 突如町に現れBARを開く謎多き女性。 自らを「実はお尋ね者」と言っているが…。
〈キャスト〉草笛光子、松田陽子、青木柚、六平直政、黒田大輔、宮崎吐夢、工藤丈輝、田中偉登、駿河メイ、村田秀亮(とろサーモン)、田中要次、沢田亜矢子、木村祐一、石田ひかり、ディーン・フジオカ、寺尾 聰
〈スタッフ〉監督:松本動、脚本:天願大介、製作プロダクション:ザフール、配給: NAKACHIKA PICTURES
©2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会