「私たちの話し方」
公開日 未定
才能とビジネスが交差する、第20回大阪アジアン映画祭が3月23日に閉幕し、スペシャル・メンション受賞作品が『私たちの話し方』に決まった。
聴覚障害を持っている主人公ソフィーは、人口内耳の手術を受け、口語でコミュニケーションをとって生活している。ある日ソフィーは、口語と手話の両方でコミュニケーションをとる青年アランと出会い、アランを介してチーソンという手話コミュニケーションの名手と友達になるが・・・。
監督のアダム・ウォンは5年前に、海の底で手話を使うという、1本のショートフィルムの脚本に出会った。海の中では、手話でのコミュニケーションは非常に有利だ。その脚本家に耳の聞こえない人の文化の話を聞きに行ったことが、本作の企画の発端になったと言う。耳の聞こえない人には独自の文化があり、多様性に富んでいると知ったことから、監督はそちら側から物を見る、ということに気が付いて映画化を始動させたのだ。
劇中でも、ダイビング中の登場人物たちが海の中で手話を使うシーンがあり、とても美しく印象的だった。映画を観るということは、自分と違う立場の人を理解することでもあるという根本に、あらためて気づかされる作品だ。ソフィー役のジョン・シュッイン(第19回大阪アジアン映画祭『作詞家志望』で主演)は、本作で金馬奬主演女優賞を受賞。湿度のある演技で心の襞を表現して本作を一級の青春映画に仕立てた。
(2024年/香港/132分)
