Ralph Fiennes stars as Cardinal Lawrence in director Edward Berger's CONCLAVE, a Focus Features release. Credit: Courtesy of Focus Features. © 2024 All Rights Reserved.

「教皇選挙」

2025年3月20日

選挙にはどろどろとした人間模様がつきもの、とよくいわれるがそれは聖職の世界でも同じなのかもしれない。本年度アカデミー賞脚色賞、ゴールデングローブ賞脚本賞を受賞したのもうなずける作品だ。
まずは予備知識を。カトリック教会のトップであるローマ教皇は亡くなるか、もしくは辞任によってしか任期が終了しない。そして新教皇を選ぶ教皇選挙(コンクラーベ)は、80歳未満の枢機卿だけが選挙権を持ち、数日に渡る選挙期間中、枢機卿(投票者であり候補者でもある)は隔離され、外部との接触や電子機器の使用を禁じられる。そんな状況のなか、定員120人のうち、投票総数の2/3以上を得る人物が出るまで繰り返されるのだという。
あらかじめこんなことを知っていたほうが、いっそう〈密室ドラマ〉が楽しめる。さらに、もう1つ。投票し終わった票は集められてバチカン市国のシスティーナ礼拝堂内で燃やされるのだが、煙突から噴き出す煙が黒ければ「未決」。白ければ「選出決定」を意味している。この映画でも、途中とラストにそうした描写があり、重要な役割を果たしている。
レイフ・ファインズが演じるローレンス枢機卿は選挙のとりまとめを担い、一方で教皇候補でもある。彼のように、「選んでほしくない」という人もいれば、ジョン・リスゴーが扮するトランブレ枢機卿のように、積極的に選挙活動をする人もいる。このあたり、「聖なる世界」にも名誉欲、出世欲が存在するという。一般社会にもある「俗世界」の要素が漂う。なかなか誰も選出に達する票にまで達せず、みんなのいらいら、人間不信がつのっていく様子が丁寧に描かれ、われわれもその一員になったような気にさえなってくる。
そんななか、もちろん一途に信仰に捧げる人物もいる。1人がカブールから来たベニテス枢機卿(カルロス・ディエス)。そしてもう1人がシスター・アグネス。彼女を演じているのはイザベル・ロッセリーニ。いまでは知る人が少なくなったかもしれないが、イタリア人監督ロベルト・ロッセリーニとイングリッド・バーグマンの娘。シスター姿で登場した時には、「バーグマンが!?」と錯覚するほどルックスも清楚な雰囲気もよく似ていて驚いた。
教皇候補にあげられた人たちの過去などがだんだん明らかになるなか、新しい教皇に選ばれたのは…。派手なアクションも激しい口論もなく、物静かに展開されるが、なぜかハラハラドキドキするサスペンス映画でもある。
〈ストーリー〉全世界に 14 億人以上の信徒を有するキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者にして、バチカン市国の元首であるローマ教 皇が、死去した。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は新教皇を決める教皇選挙<コンクラーベ>を執り仕切ることに。世界 各国から 100 人を超える強力な候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の扉の向こうで極秘の投票が始まった。票が割れるなか、舞台裏で蠢く陰謀、 差別、スキャンダルの数々にローレンスの苦悩は深まっていく。そして新教皇誕生を目前に、厳戒態勢下のバチカンを揺るがす大事件が勃発するのだった。そんなことを思わせる物語が、派手なアクションも激しい口論もないのにスリリング。しかも、誰もが驚く結末がまっている
〈キャスト〉レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニ
〈スタッフ〉監督︓エドワード・ベルガー、脚本︓ピーター・ストローハン、原作︓ロバート・ハリス著「CONCLAVE」
2024 年|アメリカ・イギリス|英語・ラテン語・イタリア語|カラー|スコープサイズ|120分|原題︓CONCLAVE|字幕翻訳︓渡邉貴子|G 公式HP︓https://cclv-movie.jp 公式 X(@CCLV_movie)︓https://x.com/CCLV_movie 配給︓キノフィルムズ 提供︓木下グループ(C)2024 Conclave Distribution, LLC.

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