「親鸞 人生の目的」
  2025年2月28日公開
  杉良太郎 舞台あいさつ、取材
  (2025年3月8日、テアトル梅田)

 「拝領妻始末」「下北の弥太郎~からっ風の子守歌」「無法松の一生」「殺陣師段平」などなど、大阪の新歌舞伎座や東京・明治座、名古屋・御園座の舞台で颯爽とした活躍をし続けた杉良太郎。それが2005年、60歳の時に「座長公演を引退する」と舞台からきっぱりと身を引いた。その潔さもなんとも彼らしかった。その後も、コンサートのステージ、「下町ロケット」などのテレビドラマに出演、そしてライフワークにしている社会貢献に尽力してきた。そんな杉は80歳、60年にわたる芸能生活で初めて取り組んだのが「声優」という仕事だった。
大阪での公開初日(3月8日)、満員の観客を前に舞台挨拶した杉は「80歳代の親鸞をという話がきて、これもなにかの因縁かなと思い引き受けました」と切り出した。この作品は、彼が晩年の親鸞役として、波瀾に富んだ生涯を語るスタイルで展開するアニメーション映画。「体で表現するクセがついているので、〝声だけ〟はちょっと頼りなかったですけど…」とホンネももらし、客席を沸かせた。 続けて、俳優として人気絶頂だからこその悩みや葛藤、陰りが見えてきた時の周囲の反応など、「生きていくことの難しさ」も飾ることなく話した。
作品については、「人間は煩悩を捨てられないことに魅力がある。親鸞はなんでそんなに悩んでいたのかな?生きていたら私が教えてあげたのに。生きている間に1つでも幸せを積み重ねていくことが大切だと思う」とも。そんななか、劇中に登場する親鸞が「生きていく苦悩」のために壁に頭をうるけるシーンに共感。「私もなんでこんなに芝居が下手なんだとホテルの壁に頭をぶつけて血だらけになったことがあり、よう似てるなと思いました」と話す。また、15歳から続けている社会貢献にも話が及び、今月にはベトナムの山岳地帯に行き学校建設をすることも明かした。
 「死ぬまでこんなこと(社会貢献)をしている」という彼の生き方は、ある意味では親鸞の生きざまと共通しているところも多いだろう。約20分に及ぶ挨拶が終わり退場する際、杉は最前列にいた車椅子の女性に近づいて声をかける、こまやかな気遣いをみせた。
 また、記者を囲んでの取材では、「舞台では演出も手掛けていただけに、なにか監督にはなにか言われましたか?」と質問すると、「セリフをこうしたいとか少し言った程度で、すべて任せました。アニメの映像を観ることなく、台本に書かれたとおり語った」という。彼の半生が重なるような、抑えた口調には、重厚感と説得力がある。作品は、宗教をテーマにしているだけに、「敷居が高い」とも思われそうだが、親鸞という1人の人間が挫折を繰り返しながら懸命に生きる意味を探そうとする姿は、誰に共通する部分が数多くあった。
〈あらすじ〉平安末期、両親を亡くした親鸞は「やがて死ぬのになぜ⽣きるのか」の答えを求め、9歳で比叡山の僧となる。修行中 に玉日姫と出会い、煩悩にまみれた自己に絶望し山を下りた親鸞は、人⽣の師・法然上人に邂逅する。親鸞と玉日姫、惹かれ合う 二人に待ち受ける衝撃の結末とは…。
〈キャスト〉声の出演:杉 良太郎、櫻井孝宏、中博史
原作:『人⽣の⽬的』高森顕徹著(1万年堂出版)、「歎異抄をひらく」高森顕徹著(1万年堂出版)  脚本:塩味鷹虎 青山 弘 監督:青山弘 音楽:篠田大介 アニメーションプロデューサー:千葉博己 下村敬治 アニメーション制作:オーロックス 制作:パラダイス・カフェ 配給:「親鸞 人⽣の⽬的」実行委員会 / 配給協力:AGentfilms ©️「親鸞 人⽣の⽬的」映画製作委員会 2025 公式サイト:shinran-life-movie.jp

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