「TATAMI」
2025年2月28日公開
多くの場面が、TATAMI(畳)の上での戦いを描いている。ジョージアの首都トビリシで行われている女子世界柔道選手権に出場し、勝ち進んでいくイランの女子選手・ホセイニと女性監督・ガンバリを軸に描かれた物語。といっても、〈スポーツもの〉によくある感動のラスト!はない。対立関係にあるイランとイスラエルとが畳の上でさえ向かい合えない、「スポーツと政治は切り離せない」という現実を突きつけられる。2019年、日本武道館での世界柔道選手権で実際に起こった事件をベースに映画化。映画史上初めてイスラエルとイランにルーツをもつクリエイターが協働し製作。参加したイラン出身者全員は亡命し、映画はイランで上映不可となっている、まさに命がけで作られた映画だ。第36回東京国際映画祭のコンペティション部門で審査委員特別賞、最優秀女優賞(ザーラ・アミール)の2部門を受賞している。
モノクロで撮影された映像、選手たちの戦いはリアルで、ドキュメンタリーを観ているような錯覚にも陥る。一方、締め技で耐える顔をクローズアップでとらえたショットは、ドラマでしか観ることができないものだ。そのあいまには、ホセイニとガンバリらが「国の名誉」として大会に送り出されるセレモニー。その後に、国の意に反して棄権することなく、勝ち進もうとするホセイニへの迫害の様子などが描かれていく。勝ち進み、イスラエル選手との試合の可能性が高まるなか、ホセイニ。「棄権すること」を説得できないガンバリは自分や家族への迫害のために、ホセイニと対立していく。
観客としては「頑張れ!」という応援だけではなく、不正義とはわかっていながら、「従ったほうが…」という気持ちさえよぎってきて、自分ならどうする!? という選択さえ迫られるのだ。
〈ストーリー〉ジョージアの首都トビリシで開催中の女子世界柔道選手権。イラン代表のレイラ・ホセイニ(アリエンヌ・マンディ)と監督のマルヤム・ガンバリ(ザーラ・アミール)は、順調に勝ち進んでいくが、金メダルを目前に、政府から敵対国であるイスラエルとの対戦を避けるため、棄権を命じられる。自分自身と人質に取られた家族にも危険が及ぶ中、怪我を装って政府に服従するか、自由と尊厳のために戦い続けるか、レイラは人生最大の決断を迫られる……。
〈キャスト〉アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン、ナディーン・マーシャル
〈スタッフ〉製作・監督:脚本 ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール 脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ
〈キャスト〉 アリエンヌ・マンディ、 ザーラ・アミール、
2023年製作/103分/G/アメリカ・ジョージア合作
原題または英題:Tatami
配給:ミモザフィルムズ
