「ウィキッド ふたりの魔女」
         2025年3月7日公開
東宝東和から試写会に招待されて、この映画を観た。
 「虹の彼方に」がいまも歌い継がれている映画「オズの魔法使い」(1939年)。主人公のドロシーをはじめ、ライオン、かかし男、ブリキ男など個性的なキャラクターがいるなか、ドロシーに水をかけられてあっけなく溶けて死んでしまう「西の魔女」は、あまり知られていない。しかし、「どんな人物にも歴史がある」。そんな“悪い魔女〟に注目したグレゴリー・マグワイアが書いた「ウィキッド」はベストセラーになり、2003年にはブロードウェイでミュージカルの舞台となり、エルファバは一躍、注目を浴びることになった。
 その当時からとても興味があって、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクションとして上演されたショート・バージョンも観たし、初演でエルフアバを演じたイディナ・メンゼルの大阪公演(2014年、大阪城ホール)にも行って、ドラマチックなメロディー、圧倒的な歌唱力を満喫。もちろん、劇団四季での日本版も2007年の初演から現在まで、たびたび観劇をしている。
 そんななかでの映画版の公開に、期待が膨らんだ。舞台版を原作にしているが、いろいろ違いがあって、それがむしろ新鮮でもあった。まず、ウィキッドとグリンダのキャスティング。エルファバには、舞台「カラーパープル」で第70回トニー賞でミュージカル主演女優賞、第59回グラミー賞で最優秀ミュージカル劇場アルバム賞を受賞したシンシア・エリヴァオ。緑色の肌をもつヒロインをアフリカ系アメリカ人を演じた、一方、グリンダ役には、これぞお嬢さん!というイメージのアリアナ・グランデ。「ふたりの魔女」のイメージが対照的で、ストーリーに説得力を増している。
 友情で結ばれる2人だが、〝許せること〟と〝許せないこと〟の価値観が違い、衝突していく。このように「オズの魔法使い」に通じるファンタジックな外装だが、そこには痛烈な社会批判が込められている。1つは、人間の言葉を話す動物を話せなくするという「差別」。また、自らの意思とは関係なく、翼を付けられ飛ぶようになった猿たちも哀しい! さらに、暗示的なのは、「オズの魔法使い」の存在。自らを大きく、偉大な存在に思わせる過度な「演出」は、いまの時代にも共通していて、なんとも恐ろしい。

 魔法使いに招かれたエルファバを歓迎するミュージカルシーン。舞台版初演でのエルファバ役のイレナ・メンゼル、グリンダ役のクリスティン・チェノウェスがゲスト出演するのも、「通」にはうれしいサービスだ。舞台では第1幕に登場するエルファバが杖にまたがり宙を舞い熱唱するシーン。いつ登場するか?と思っていると…。2時間41分の大作だが、「to be continue」(次回に続く)というテロップ。2025年11月21日に世界公開される予定だそう。まだ、明かされることがなかった、ブリキ男、ライオンらの誕生秘話、そしてエルファバの出生の秘密などが明かされるのでは?と勝手に予想している。
〈ストーリー〉魔法と幻想の国オズにある<シズ大学>で出会ったふたり― 誰よりも優しく聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、誰よりも愛され特別であることを望むみんなの人気者グリンダは、大学の寮で偶然ルームメイトに。見た目も性格も、そして魔法の才能もまるで異なるふたりは反発し合うが、互いの本当の姿を知っていくにつれかけがえのない友情を築いていく。
ある日、誰もが憧れる偉大なオズの魔法使いに特別な力を見出されたエルファバは、グリンダとともに彼が司るエメラルドシティへ旅立ち、そこでオズに隠され続けていた“ある秘密”を知る。それは、世界を、そしてふたりの運命を永遠に変えてしまうものだった…。
〈キャスト〉シンシア・エリヴォ、アリアナ・グランデ、ジョナサン・ベイリー、イーサン・スレイター、ボーウェン・ヤン、ピーター・ディンクレイジ
、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラム
〈スタッフ〉監督:ジョン・M・チュウ、製作:マーク・プラット、デイヴィッド・ストーン、脚本:ウィニー・ホルツマン、原作:ミュージカル劇「ウィキッド」 / 作詞・作曲:スティーヴン・シュワルツ 脚本:ウィニー・ホルツマン、原題: WICKED
スコープサイズ/ドルビーデジタル/上映時間:2時間41分/字幕翻訳: 石田泰子 / 日本語吹替翻訳:桜井裕子
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♯映画ウィキッド

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