「ANORA アノーラ」
2025年2月28日(金)大阪ステーションシティシネマ他 全国公開

富豪の息子とストリップダンサーの恋。哀しみとユーモアをコインの裏表のように使って描いたドラマで、第97回アカデミー賞では6部門にノミネートされている。
ブルックリンのナイトクラブで働くアノーラは、23歳のロシア系アメリカ人。売れっ子の彼女はある日、ロシア人の青年イヴァンの指名を受ける。イヴァンはロシアの新興財閥の御曹司。両親がアメリカに居ないうちに、豪邸にアノーラを連れ込んだイヴァンは、仲間を呼んでパーティー三昧の後、ラスベガスに飛んでアノーラと結婚してしまう。
物語は悲劇の予感に満ちている。まず、イヴァンの両親が、なかなか登場しないのがミステリアスな要素だ。かわりに両親が雇った世話役で、アルメニア人の司祭がチンピラのイゴールとガルニクを連れて新婚カップルの前に現れる。“息子と娼婦を別れさせろ”と、両親から命じられたコワモテの3人とアノーラ達はどう対峙するのか。
監督、脚本、製作、編集のショーン・ベイカーは、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』などで高い評価を得ているインディーズ映画界の鬼才。主人公アノーラ役のマイキー・マディソンと、司祭役のカレン・カラグリアン(ショーン・ベイカー作品の常連俳優)、チンピラ役のユーリー・ボリソフ(『コンパートメント№6』で人気)はあて書きで、3人が衝突するシーンはユーモアにあふれる。アノーラとチンピラとの格闘でドラマは盛り上がるが、やがてアノーラの現実と理想のせめぎ合いが始まる。
ショーン・ベイカー監督の演出は、アノーラのバイタリティを活写しつつ、彼女の尊厳を踏みつける強い立場の人間達を嗤う。本作には過激なシーンも多く、レイティングは18歳未満の鑑賞を禁止するR18+だが、モラルの面でシナリオのかじ取りがしっかり出来ている。
なによりアメリカ・インディーズ映画界をけん引する監督の反骨精神に触れることが出来るので『アノーラ』はぜひ観ていただきたい作品だ。カメラはベイカー監督の前作『レッド・ロケット』でも撮影監督を務めたドリュー・ダニエルズ。
(2024年/アメリカ/139分/英語・ロシア語)
配給 ビターズ・エンド ユニバーサル映画
©2024 Focus Features LLC. All Rights Reserved. ©Universal Pictures

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