劇場アニメ「ベルサイユのばら」

   2025年1月31日公開

 いまから半世紀も前。タカラヅカ版「ベルサイユのばら」初演(1974年~76年)が社会現象になるほどの大ヒットとなり、私にもその情報が伝わってきた。宝塚大劇場がある兵庫県宝塚市から数駅の大学に通っていたとはいえ、タカラヅカそのものを観たこともなく、いきなり「観たい!」と思ってもチケットは完売。そんなとき、同じゼミの女学生が池田理代子が描く少女漫画の全巻を貸してくれたのが〝初めての出会い〟。
 その後、新聞社文化部記者としてタカラヅカ担当になり、その間に上演さreta「ベルサイユのばら」再演(1989年~91年)を取材。さらに、初演メンバーとも取材などを通じて面識ができた。なかでも初代マリー・アントワネットを演じた初風諄とは、舞台「宝塚BOYS」などさまざまな局面でお世話になっている。その間には、同名のテレビアニメや日仏合作映画(1979年、監督・ジャック・ドゥミ。音楽・ミシェル・ルグラン)があり、タカラヅカも再演を重ねていて、すっかり〝近い存在〟に感じている。
 そんな歴史をもつこの物語が、初めて完全新作劇場アニメになった。オープニングは、少女時代のアントワネットが登場。そこから彼女たちを護衛する近衛隊のオスカル、幼馴染のアンドレの描写へと続いていく。いわば〝オスカルとアンドレ編〟。男装の麗人というは、やはり非日常の存在なので、〝リアルを超えたもの〟にも違和感がなく、説得力があるアニメもうってつけ。身分は違うなかで男性が女性につくす。谷崎潤一郎の「春琴抄」にも通じるこういった構図は、ピュアな愛をいっそう際立させる。覚悟を決めた戦いに向かう前夜の2人の描写はその象徴だ。
 近衛隊でありながら、市民側に立ったオスカル、史実に則した壮絶な戦いは、夢の世界に浸りそうな我々に歴史を考えさせてもくれる。
〈ストーリー〉将軍家の跡取りで、〝息子〟として育てられた男装の麗人オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。母国オーストリアから嫁いできた気高く優美な王妃マリー・アントワネット。オスカルの従者で幼なじみの平民アンドレ・グランディエ。容姿で知性的なスウェーデンの伯爵ハンスアクセル・フォン・フェルゼン。彼らは栄華を誇る18世紀後半のフランス・ベルサイユで出会い、時代に翻弄されながらも、それぞれの運命を美しく生きる。
〈スタッフ〉監督:吉村愛 脚本:金春智子 キャラクターデザイン:岡真里子 
音楽プロデューサー:澤野弘之 音楽:澤野弘之 アニメーション制作:MAPPA
主題歌 綾香

〈キャスト〉オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき マリー・アントワネット:平野 綾 アンドレ・グランディエ:豊永利行 ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 アラン・ド・ソワソン:武内駿輔 オラフ
フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也 ロイドベルナール・シャトレ:入野自由 ルイ16世:落合福嗣 ジャルジェ将軍:銀河万丈 ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹 アラン・ド・ソワソン:武内駿輔 フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也 ベルナール・シャトレ:入野自由 ハク
ルイ16世:落合福嗣 中村正道 ジャルジェ将軍:銀河万丈 マロン・グラッセ・モンブラン:田中真弓 ナレーション:黒木瞳

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