「ライオン・キング:ムファサ」
2024年12月20日公開
数あるディズニー・アニメーションのなかで、アニメ版「ライオンキング」(1994年)は好きな1作。さらに、それを舞台化したミュージカルは、ブロードウェイ初演(1997年)前のニューヨークでの製作記者会見を皮切りに、劇団四季版も数えきれないほど取材し、感激した大好きな作品。そして、フルCGによる同名映画(2019年)も話題を集めた。ということで、公開初日(12月20日)に映画館へ向かい観賞した。
アニメ版が上映された頃、手塚治虫の「ジャングル大帝」と〈共通点〉が多いことが話題になったが、それは当たり前。主人公の父親(デンマーク国王)は弟の手によって亡くなり、その弟は母親を妻にしようとしている…。こうした構図の原点になったのは、シェイクスピアの「ハムレット」。手塚もディズニーもそれぞれ、その名作をリスペクトして製作したのだから〈共通点〉が多いのは当然のことだった。
「ハムレット」では亡霊となった父親が、自らが死んだ経緯を語るのが発端。それに倣って例えると、「ライオン・キング:ムファサ」は、前作のメインだったシンバの亡き父親・ムファサの生涯が描かれている。「ゴッドフアーザー」(1972年)に続いて、時代を遡ってドン・コルレオーネの青年時代を描いた「ゴッドフアーザー PARTⅡ」(1974年)。「マッド・マックス・怒りのデスロード」(2015年)に続いて、同じように時を戻した「マッド・マックス・フュリオサ」(2024年)のように、〈SAGA サーガ〉(年代記)になっている。
超実写映画として製作されたこの映画、冒頭は彼が王として君臨する領地・ミレーレ(舞台などでは「プライドランド」)の断崖に立つ大人に成長したシンバが映し出される。バックには、スワヒリ語を交えて壮大なメロディ(新曲)が流れ、前作などをイメージしたシーンで始まる。シンバをはじめ、ラフィキ(マンドリル)、プンバァ(イボイノシイ)、ティモン(ムーアキャット)らおなじみのキャラクターも登場。ラフィキがシンバの娘・キアラに「お爺さん(ムファサ)のこと」を話す設定で物語が展開していく。コメディ・リリーフ役のプンバァとティモンは、「砂漠をさまよっていたシンバと初めて遭遇した」というこれまでの経緯から、物語の本筋ではなかなk存在感が表せないのがちょっと残念。そのぶん、持ち歌「ハクナマタタ」を歌おうとするが、「これは止めておこう」と自主規制? このあたり、舞台版でザズー(サイチョウ)が「ビー・アワー・ゲスト」(「美女と野獣」の1曲)を歌い始めるが途中でストップすることのパロディ? 今回はムファサの執事になるザズーの出番が多く、いい仕事をしている。
ストーリーの本筋は、ムファサと兄弟同様に育ったタカ(後のスカー)との友情。敵対する白いライオン・キロスとの闘い。ムファサとタカが歌う劇中歌「ブラザー/君みたいな兄弟」をはじめ、「モアナと伝説の海」なども手掛けているリン=マニュエル・ミランダが7曲を新たに書きおろして、ドラマを盛り上げている。一方、「サークル・オブ・ライフ」「愛を感じて」などティム・ライス(作詞)、エルトン・ジョン(作曲)、レボ・Mをイメージさせる旋律がかすかに流れ、レガシーを受け継いでいる。そして、オーケストラが奏でる「サークル・オブ・ライフ」のラストで、まさに「運命の輪」というメッセージを高らかに歌い上げて大団円。さらに大きな輪になる予感も。
映画館では吹き替え版を選択。王様(渡辺謙=「王様と私」)、ジャン・バルジャン(吉原光夫 =「レ・ミゼラブル」)、トミー・デヴィート(尾上右近=「ジャージー・ボーイズ」)。ゲンタ(松田元太=「Endless SHOCK」)と、ミュージカルでも活躍しているそうそうたるメンバー。ということで、もう少しミュージカル風味が欲しかった。
〈日本語版〉 (タカ), MARIA-E (サラビ), , 和音美桜 (アフィア), 悠木碧 (アクア), LiLiCo (賢いキリン), 賀来賢人 (シンバ), 門山葉子 (ナラ), 佐藤二朗 (プンバァ), ミキ・亜生 (ティモン), 駒谷昌男 (ラフィキ), 渡辺謙 (キロス)
〈日本語版〉
尾上右近 (ムファサ), 松田元太 (タカ), MARIA-E (サラビ), 吉原光夫 (マセゴ), 和音美桜 (アフィア), 悠木碧 (アクア), LiLiCo (賢いキリン), 賀来賢人 (シンバ), 門山葉子 (ナラ), 佐藤二朗 (プンバァ), ミキ・亜生 (ティモン), 駒谷昌男 (ラフィキ), 渡辺謙 (キロス)

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