「小学校 ~それは小さな社会~」
2024年 12月13日(金)よりテアトル梅田ほか全国順次
東京の公立小学校を取材したドキュメンタリー作品。ただ淡々と学校、子供、親や先生を描いたもので、給食、掃除、学校行事などの特別活動に日本独自のものがあると、海外から熱い注目を浴びている。
撮影は2021年春のから1年生と6年生に的を絞って撮影された。入学したての1年生の子供たちは、まだ白紙のノートのような存在だ。担任のわたなべ先生も、緊張の面持ちで黒板の前に立っている。彼女は、たとえば給食当番の子がおかずを落としてしまったり、ちょっとしたミスをした時に、子供にかける言葉が論理的で温かい。一方で、小学校最終学年を受け持つえんどう先生は、これから中学に上がる生徒たちに、時おり喝を入れている。2人とも煩雑なルーティンの中、生徒たちとの1年を走り抜けていく。
子供を撮影するのは難しいと言われるが、本作のカメラは常に忙しく動き回りながらも、何人か主要人物の個性をしっかり押さえスクリーンに焼きつけた。加えて、前述のわたなべ先生や、えんどう先生、その他の先生とのやりとりの中で、ドラマ性のある映像が立ち上がっている。わたなべ先生タイプばかり居るわけではなく、えんどう先生タイプばかりでもない。そんな職員室にカメラが入ると、生身の人間が学校システムを動かしていることに、何故かホッとした。海外の反応の中には「こんなに日本のことがよく分かる映画を観たことが無い。『だから、日本はこうなんだ』ということが深く理解出来た」(アメリカ・ニューヨークのジャパン・カッツ)というものがある。先生の号令で、校庭に整列したり、座ったり、(コロナ禍の時の撮影なので)黙食したり、一斉に移動したりする姿を見ていると実に言い得て妙だと思う。
現在、残念なことに日本の小学校は減ってきているのだが、さてこのシステム、将来はどうあるべきなのか。可愛い音楽とは裏腹に、山崎エマ監督の鋭い視線の先には、日本の今が映っている。
(2023/99分/日本・アメリカ・フィンランド・フランス)
配給: ハピネットファントムスタジオ
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