「正体」
    2024年11月29日公開
 死刑囚が脱走し、敏腕刑事の眼を欺きながら、日本各地を逃走するストーリーだ。単独犯か?共謀者が居るのか?演出はスリリングで、死刑囚・鏑木の逃走の日々が描き出される。
監督は藤井道人。社会派映画「新聞記者」を撮ったかと思えば、「余命10年」のようなロマンスもヒットさせ、青春映画「青春18×2 君へと続く道」も話題に。まさにオールマイティーな“職人”で、日本映画界では変わった監督である。今回メガホンをとったのは社会派ド真ン中の作品で、藤井監督の持つ鋭い人権感覚が、演出のそこここに、滲み出ている。
この手の映画にありがちだったのは、最初から白黒はっきりしているドラマ構成だが、藤井監督と小寺和久によるシナリオは、刑事の視点を取り入れながら、司法の迷路を描き、終章まで見る者の好奇心を引っ張る。
殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木に扮するのは横浜流星。監視の目を欺いて逃亡し、日本各地で潜伏生活をする鏑木を、ある時はやつれきった姿で、ある時は生き生きとした青年の姿で演じた。「流浪の月」で演じたDV癖のある男で、彼の演技力に圧倒されたが、本作でも単なる外見の七変化だけでなく、潜伏先で出会う人々との摩擦や友情を、デリケートに演じて感動させる。間違いなく今年を代表する作品の1本である。
(2024年/日本/120分)
配給 松竹
©2024映画「正体」製作委員会

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