「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」
2024年12月13日公開
東宝東和から試写会に招待されて、この映画を観た。どちらかと言うと、スリラーやホラーは苦手なので、〝恐る恐る〟観たのだが、私の勝手な予想以上によくできていて、最後までまさに目が離せない展開だった。
 「おもてなし」といえば、もてなされる側が快適になるもの…が普通なのだが、それが度を超すと、それどころかある目的があったら、とても厄介なもの。この映画は、〝ブラックなおもてなし〟をする家族、もてなされる家族を描いているよくできたスリラー。
 トスカーナでバカンスを過ごすアメリカ人のベン(スクリート・マクネイリ)とルイーズ(マッケンジー・デイヴィス)と娘。一方、イギリスからパトリック(ジェームズ・マカヴォイ)とキアラ(アシュリン・フランチオージ)と息子もそこにいた。開放的な雰囲気のなか、知らない者同士が仲良くなる、のはよくあることだが、この場合はちょっと違う。冒頭、プール沿いのロングチェアでくつろぐベン夫婦に、「横のチェア空いていますか?」と声をかけてくるパトリック。空いているのを確認すると、家族のいるところまでそれを引きずっていくのだが、地面に擦って引きずっていく音が大きく、どこか不気味で、その後に起こることを暗示している。そんな怪しさもあるパトリックだが、一方で「話したがりの男性」を避ける話術は巧みで、ベン夫婦もわれわれ観客も「そんなに悪い人でもなさそう」とも思わせる。そういった惑わせるような描写があるのが、この映画のおもしろいところ。
 バカンスから戻ったベン夫婦に、イギリスに戻ったパトリックからの招待。「気分転換」にとベン一家は人里離れた彼の自宅を訪れる。最初は「国境なき医師団」メンバと言っていたパトリックだが、それを否定したり、またそれを冗談と言ったり。行きつけの店でなにやら妖しい仕草をしたりもする。決定的なのは、短い舌のために言葉が不自由だという息子の存在。ベンたちは当然のように、理由を作って早々に帰ろうとするのだが、いろいろな出来事が起こって、それができない。そうした設定や描写に無理がなく、ひょっとしたら自分にも、こんな事が起こるかも?とさえ思い、恐怖感がいっそう募っていく。
 そして、脱出するための抗争、アクション!へ。ベンよりも、果敢に戦うルイーは、この夫婦の関係性を物語っているようでもある。
いまの世の中、甘い言葉には乗らず、「お・も・て・な・し」にも注意をしなければ、とも思わせてくれる。
〈ストーリー〉あるアメリカ人家族が、旅行先で意気投合したイギリス人のパトリック(ジェームズ・マカヴォイ)家の 自宅に招待され、一緒に過ごすことに。 人里離れた場所で休暇を満喫していたが、パトリックの〝おもてなし〟の小さな違和感が積み重なって いき、やがて、その裏に隠された、想像を絶する恐怖を知ることにー
〈キャスト〉ジェームズ・マカヴォイ、マッケンジー・デイヴィス、スクート・マクネイリー、アシュリン・フランチオージ、アリックス・ウェスト・レフラー、 ダン・ハフ、スクート・マクネイリー 他
〈スタッフ〉監督&脚本:ジェームズ・ワトキンス、製作:ジェイソン・ブラム、ポール・リッチー、製作総指揮:ベアトリス・セケイラ、ヤコブ・ヤレク、 クリスチャン・タフドルップ
映倫区分:PG12  配給:東宝東和
♯ スピーク・ノー・イーブル

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