「DOG DAYS 君といつまでも」
2024年11月1日公開
犬や猫が登場する作品には、「かわいい!」が前面に押し出されていて物がたくさんある。それらは主に「動物が大好き」という人には熱く支持されていて、それはそれでいいが、「そうでもない」という私などの〝少数派〟は、正直ちょっと引いてしまうことがあるのも事実。この映画も…、と思いながら観はじめたのだが、そうではなかった。確かに、〝かわいい!ペット〟としての犬たちが登場するが、けっして人間=俳優を〝食う〟ようなクローズアップされた存在ではなく、そうした犬たちに愛情を注ぐ人々の心温まるドラマが展開。さらに、動物たちの「安楽死」や人が人を愛すること、年老いていく孤独などを声高ではなく、自然にコミカルに描いているので、どんどん惹きつけられていった。
なによりも身近に感じたのは、ユ・ヘジンが演じている人物。けっしてイケメンでダンディでもないルックスもだが、彼は心情的にも同感できる等身大のキャラクター。いまや〝多数派〟の「犬好き!」というわけでもなく、最初のうちはむしろ「迷惑」とさえ思っているのだ。しかも、会社では、いいところを見せようと実現不可能とも思えるリゾート開発プランをぶちあげてしまう…。そこから心変わりしていく出来事が展開していく、
また、「ミナリ」で韓国人俳優として初めてアカデミー賞を受賞したユン・ヨジョンが、愛犬と暮らす女性を演じている。高名な建築家としてのインテリジェンスを放つ一方、プライベートでは夫と死別、子供たちも独立しての孤独な日々。その両面が演技を超えた自然なふるまい、たたずまいで伝わってくる。さらに、もう1つのドラマは、不妊治療がうまくいかず、養女を迎えた家庭。母親を演じているのはキム・ユンジンで、韓国映画が日本でも広まるきっかけともなった「シュリ」のヒロインが懐かしい。ぎこちない親子関係を過ごす日々のなかで迷い犬と出会い、それを介して自然に会話が進んでいく。娘が、その犬に「いい子にしていないと、施設に入れられるよ」と語りかけるシーンは、彼女の立場とダブって胸に迫ってくるのだ。
美男美女が〝ドラマチック〟なラブストーリーを繰り広げる映画が多いなか、
普通の人たちが(すべて善人)によるこの作品は、ほのぼのとして気持ちで楽しめる。
〈ストーリー〉きっちりした性格のミンサン (ユ・ヘジン)は、 動物病院 「DOG DAYS」のせいで、 自宅周辺に犬の糞が転がっていることが忌々しい。 院長ジニョンと今日もやり合ったミンサンは、有名建築家ミンソ (ユン・ヨジョン)にたしなめられる。 リゾート開発に関わるミンサンは、 ミンソを紹介してもらおうと、 ジニョンが助けた保護犬 チワワの 「車長さん」を一晩預かることに。 ミンソは散歩中に倒れ、フレンチブルドッグの愛犬ワンダを見失う。 居合わせた配達員のジヌはワンダ探しを手伝う。 その頃、 作曲家ソニョンとジョン
アの夫妻に養子に迎えられた少女ジユが、 迷い犬と出会う。一方 「DOG DAYS」 には、ゴールデンレトリバーのスティングが担ぎ込まれる。大慌てで連れてきたのは、恋人スジョンの留守中にスティングを預かるヒョン。 そこへスジョンの元彼ダニエルが現れて…。犬を介して出会い、 心を通わせる人々の日常が、 少しずつ動き始める。
〈キャスト〉ユン・ヨジョン、ユ・ヘジン、キム・ユンジン、チョン・ソンファ、キム・ソヒョン、ダニエル・ヘニー、イ・ヒョヌ、タン・ジュンサン、ユン ・ チェナ。
〈スタッフ〉監督・キム・ドクミン、脚本・ユ・ヨンア、脚色 ユン・ジェギュン、キム・ドクミン、ソン・ジュヒ。
原題:도그데이즈/韓国映画/カラー/シネマスコープ/5.1ch デジタル/120 分/翻訳:小西朋子
提供:楽天 配給:ギャガ、宣伝:ミラクルヴォイス
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