「MUSICAL 三銃士」
2024年9月8日~9月28日
東京・日生劇場
10月4日~10月6日
広島・広島文化学園HBGホール
10月18日~10月27日
大阪・SkyシアターMBS
19世紀フランスの作家、アレクサンドル・デュマ。彼が発表した小説を読んだことがない人でも、「三銃士」という名称、颯爽とした剣士たちのイメージには聞き覚え、見覚えのある人も多いだろう。というのも、胸のすく格闘シーン、熱い男同士の友情、そして一途なラブストーリーなど〝見映え〟するシーンが数多く登場することもあり、これまでに数えきれないほどドラマ化されているからだろう。さらに、そこに記された「One for All,All for One」(1人はみんなのために、みんなは1人(1つの目的)のために」という三銃士の誓いの言葉は、小説から独り立ち。ラグビーなどのスポーツのチームプレーでよく使われる。さらに、劇団四季『ユタと不思議な仲間たち』の劇中歌「友だちはいいもんだ」の歌詞などにも登場するなど、一般的なフレーズになっている。
このミュージカルでも、三銃士とダルタニャンが剣を重ねて「みんなは1つ」と誓い合うシーンがたびたび登場。さらに、メインテーマ曲に映画『三銃士』(1983年)でも流れた「All For Love」が使われている。映画公開当時、ブライアン・アダムス、ロッド・スチュワート、スティングの3人が、“三銃士”さながらに歌いヒットしたメロディーだ。このように、私が記憶に残っているだけでも、この1983年版の映画や、リチャード・レスター監督による『三銃士』(1973年)、続編の『四銃士』(1974年)など、いろいろなバージョンの映画、舞台を観てきた。
今回、上演されたミュージカルは、2004年にチェコで製作、2009年に韓国で脚本や楽曲が大幅にリニューアルされ、再演が繰り返されている。さらに、今回の日本版では、三銃士のリーダー格・アトスにもさらに焦点を当て、展開をスピードアップしている。また、興味深いことに、レオナルド・デカプリオが主演した映画『仮面の男』(1998年)でも描かれたように、「鉄仮面」伝説も取り入れていること。実は「鉄仮面」はルイ14世の時代を背景にしているので、このミュージカルで描かれたルイ13世の時代でないのだが、それを大胆に、巧みにアレンジして波乱万丈のストーリーをさらに盛り上げている。
映像を多用したり、人物の多面的な部分に焦点を当てるなど、重厚ながら少しわかりにくくもある作品が多いなか、このミュージカルはストーリーがわかりやすく、いい意味で「シンプル」。ダルタニャンと三銃士が悪者を倒すために展開するダイナミックなアクション。一方、ダルタニャンとコンスタンス、アトスとミレディとの熱いラブストーリーは、ミュージカルならではの想いを歌い上げるソロ、デュエットで表現し、これもまた伝わってくる。みんなでボートに乗っているシーンで、アラミスが「また、2人で歌うよ」と嘆く?と、そのとおり!ダルタニャンとコンスタンスが歌い出す、〝掟破り〟の設定がなんともおかしかった。
2幕、2時間強とスピード感満点。そのぶんなのか、ダルタニャンとコンスタンスがまさに一瞬にして恋に落ちるのは…。このあたりは、気持ちの微妙な高まり、推移をもう少し〝じっくり〟と観たいとも思ったのだった。
〈ストーリー〉17世紀のフランス。 国王ルイ13世を守る近衛銃士隊と、政治の実権を握るリシュリュー枢機卿直属の親衛隊との間で争いが絶えず、三銃士を率いるアトス(坂本昌行)は、国王を守る銃士の一人としてその渦中にいた。亡き父と同じ銃士になることを夢見て、田舎町からパリへと出てきたダルタニャン(末澤誠也)は、アトスに続き、アラミス(上口耕平)、ポルトス(原田優一)と出会い、コンスタンス(屋比久知奈)と恋に落ちる。当時は決闘を禁止されていたため、リシュリュー卿(今井清隆)の親衛隊長ジュサック(上山竜治)が法律違反を名目に、三銃士とダルタニャンを逮捕しにやってくる。三銃士とダルタニャンは共に戦い勝利、祝杯をあげている時に、コンスタンスがさらわれる。彼女をさらったのは国王と対立するリシュリュー卿の腹心となり暗躍するミレディ(シルビア・グラブ)だった。一方、国王が行方不明になったことが発覚。リシュリュー卿が、国家を揺るがす陰謀を企てていた…。
原作・アレクサンドル・デュマ。音楽・マイケル・ディビィッド。製作・松竹。企画・制作・クオラス