「音楽劇  ライムライト」

2024年8月3日~18日   シアタークリエ
     8月23日~25日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
     8月31日~9月1日 別府国際コンベンションセンター

このところ、「ライムライト」がマイブームになっている。というのは、自らが関わったイベント「第2回浜村淳の映画塾」(2024年7月19日)のテーマに、チャールズ・チャップリンが監督した「ライムライト」(1952年)を選び、久しぶりに映画を観直し、改めて細部までこだわった演出と芸に感心をした。まさに、チャップリンにしかできず、生まれることがなかった名作。それを音楽劇として舞台化しようという大胆な「挑戦」。これまで世界中でオファーがあったなか、日本だけ許されたのだという。 
2015年に石丸幹二が主演、上演台本・大野裕之。演出・荻田浩一。音楽・編曲・荻野清子というスタッフで初演、2019年に続いて今回が3度目の上演となった。そのすべてで、石丸が年老いた芸人・カルヴェロを演じているが、バレリーナのテリー、ピアニストのネヴィルは毎回違うキャスト。私は初演から観続けている。
 物語は、カルヴェロがどこからか漂う「異臭」を感じたことから始まる。ちょっと体を左右に振るような歩き方などチャップリンを意識した動きで、隣室から漏れるガスとは気づかずに一瞬、片足を上げて靴底をチェックするようなしぐさをする。ここはクスッと笑える瞬間ではあるが、そこに「演技」と「芸」との壁、違いを感じた。それぞれの登場人物は、さりげないしぐさ、たたずまいからじんわりと人柄がにじみ出てくるというよりも、輪郭をはっきりさせるという趣向。そのなかでは、保坂知寿の自然体が光った。
欲を言うと、「カルヴァロが芸人」というのを際立たせるためにも、数分間でも1人芸(パフォーマンス)があってもいいのでは。例えば、映画に登場した2匹の架空のノミを操るパントマイムなどはどうか? さらに言うと、熱演のあまり舞台下に転落、大きなドラムに挟まってしまうというおかしくもあり哀しい芸人の最期はやはり踏襲してほしかった! ということで、よくも悪くもこの舞台は、映画を過度にダブらせることなく、楽しむことが大切。再演を重ねるにつれ、石丸に渋さや味わいがさらに加わることだろうし、ライフワークにしてほしいと思った。
〈ストーリー〉
1914年、ロンドン。かつては人気者だったが、いまや落ちぶれた老芸人のカルヴェロ(石丸幹二)は、元舞台女優のオルソップ夫人(保坂知寿)が大家を務めるフラットで酒浸りの日々を送っていた。ある日カルヴェロは、脚が動かなくなっていたバレリーナのテリー(朝月希和)ガス自殺を図ったところを助け、テリーを再び舞台に戻そうと懸命に支える。その甲斐もあり歩けるようになったテリーは、ついにエンパイア劇場のボダリング(植本純米)が演出する舞台に復帰、将来を嘱望されるまでになった。かつてほのかに想いを寄せたピアニストのネヴィル(太田基裕)とも再会する。テリーはカルヴェロに求婚するが、ネヴィルと結び付けようと姿を消す。ロンドン中を捜しまわりようやくカルヴェロと再会。劇場支配人であるポスタント(吉野圭吾)が、カルヴェロのための舞台を企画しているので戻って来て欲しいと伝えるテリー。カルヴェロはテリーの気持ちに突き動かされ、再起を賭けた舞台に挑むが…。

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