「ロミオ&ジュリエット」
2024年5月16日~6月10日 新国立劇場中劇場
6月22日~6月23日 AICHI
7月3日~7月15日 梅田芸術劇場メインホール
シェイクスピアの戯曲のなかでも最も有名な作品。ストレートプレイだけでなくミュージカル化も数多く、「ウエストサイド・ストーリー」のように〈現代劇〉として翻案されるなど、さまざまなバージョンが作られている。この舞台は、2001年にフランスで生まれたもの。2010には宝塚歌劇団によって初演され、翌年から日本オリジナルバージョンとして制作、これが6度目の上演となる。(7月3日午後5時の回、岡宮来夢、奥田いろは他が出演の公演を観劇)
この物語のベースにある「死」を象徴するダンサーが1人たたずみコンテンポラリーダンス。日本オリジナル版を潤色・演出した小池修一郎による「エリザベート」のトート(死神)軍団をほうふつするシーンから幕が開く。考えようによっては〈ボーイ・ミーツ・ガール〉(男女が出会って恋が芽生える)の典型的なパターンとも思える物語が、これによって深遠なストーリーに思えてくる。そこからキャピュレット家とモンタギュー家の若者たちの対立がエネルギッシュな歌と踊りで展開され、「ウエストサイド・ストーリー」のジェット団とシャーク団のあのダンスがダブってくる。
宝塚バージョンをはじめ、初演から観ていることもあるのだが、「エーメ」などフランス版オリジナルのナンバーが美しく、覚えやすく情感をかきたてる。
いまさらながら、気が付いたのだが登場人物がスマートフォンを携帯していて、メールや画像配信があたりまえのように使っている。そもそも、「連絡の行き違い」から悲劇が起こる物語だけに、便利な携帯電話があれば、それが成立しないのでは? とも思えた。数ある映画版のなかで、レオナルド・デュカプリオ主演、バズ・ラーマン監督の「ロミオ+ジュリエット」(1997年)も現代という設定だったが、まだ普及していない?こともあったのか、アイテムとして登場しなかったような気がする。ところが、この舞台では、結構あたりまえのように使われていて、これは厄介だぞ!?と余計な心配までしてしまった。ところが、未成年のジュリエットは「親が管理している」というし、ロミオは大切なときに「奪われてしまう」という設定。それなら現代ものとして描く理由が希薄な気もした。オーソドックスな純愛を、荘厳なスタイルで描いたことがこの舞台の魅力。私にとっては、若者の悲劇そのものよりも、互いに愛する子を失った父親が握手するラストシーンになぜか目が潤んだ。
〈ストーリー〉キャピュレット家とモンタギュー家が代々憎しみ合い、 争いを続けてきたイタリアの街ヴェローナ。ある日、 キャピュレット家ではひとり娘のジュリエットに、 大富豪パリス伯爵を求婚者として紹介しようと舞踏会を開催。そこへ、 モンタギュー家のひとり息子ロミオが友人のベンヴォーリオ、 マーキューシオと共に忍び込む。 その舞踏会で、ロミオ&ジュリエットは運命的な出会いをはたし、一目惚れの恋に落ちた。舞踏会にモンタギュー家の侵入者がいることに気付いたティボルト (ジュリエットの従兄弟)の介入で、お互いが敵対する家の者だと知り、ショックを受ける。そんな矢先、両家の若者の間でいさかいが勃発。ロミオは仲裁に入るが、 親友のマーキューシオがティボルトに刺され、 親友の死を目の当たりにしたロミオは逆上し、 ティボルトを殺してしまう。レットは、ジュリエットとパリス伯爵と結婚させらそうなジュリエットをみかねたロレンス神父は、仮死状態になる薬をジュリエットに渡し、眠りから覚める前にロミオを霊に向かわせるという策略を企てるが…。
〈キャスト〉ロミオ・小関裕太 / 岡宮来夢。ジュリエット・吉柳咲良 / 奥田いろは(乃木坂46)。ベンヴォーリオ:内海啓貴 / 石川凌雅。マーキューシオ:伊藤あさひ / 笹森裕貴。ティボルト:太田基裕 / 水田航生。死:栗山廉(K-BALLET TOKYO) / キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)。キャピュレット夫人:彩吹真央。乳母:吉沢梨絵。ロレンス神父:津田英佑。モンタギュー卿:田村雄一。モンタギュー夫人:ユン・フィス。パリス:雷太。ヴェローナ大公:渡辺大輔。キャピュレット卿:岡田浩暉ほか。
〈日本版スタッフ〉潤色・演出・小池修一郎。音楽監督・太田健。 劇振付 KAORIalive AKIHITO 、 小尻健太 。美術・二村周作。照明・笠原俊幸。音響・大坪正仁。衣裳・生澤美子。 ヘアメイク・富岡克之 (スタジオAD)。映像・石田。アクション監督・栗田政明。歌唱指導・山口正義、堂ノ脇恭子、板垣辰治。音楽監督補・稽古ピアノ・松田眞樹、稽古ピアノ・中野裕子。振付助手・振付協力 渡辺レイ。振付助手・小野麻里子。演出助手・坂本聖子、平戸麻衣。舞台監督・中村貴彦。