「第九回 あべの歌舞伎『晴(そら)の会』」
2024年8月1日~4日
連日、正午と午後5時開演、全8回公演
近鉄アート館
上方歌舞伎の名門、重鎮に師事し、活動している歌舞伎俳優たちによる「あべの歌舞伎」が上演される。会場は南座、松竹座といった花道のある劇場ではなく、客席が三方を囲む近鉄アート館(客席数・約300人)。2014年3月、劇場が演劇事業を再開した際に片岡愛之助が「三番叟」などを披露したのをきっかけに、翌年に松竹が主宰した上方歌舞伎塾第1期生の片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎を中心に結成。片岡秀太郎が「晴(そら)の会」と命名したもの。毎年夏に上演され、コロナ禍のために1年だけ中止されたため、今回が9回目。満を持して、「日本三大仇討」の1つに数えられる「伊賀越道中双六」(いがごえどうちゅうすごろく)を上演されることになった。近年が、「沼津の段」だけ上演されることが多いが、発端の「和田行家殺し」から大詰「伊賀上野の仇討」までの〝通し〟で上演。ただし、これまでの台本(原作・近松半二、近松加作)なら1日かかるところを、亀屋東斎(千次郎のペンネーム)が約3時間に改訂した。
6月28日には、出演する片岡松十郎、片岡千壽、片岡千次郎、 片岡當吉郎、片岡りき彌、中村翫政、 片岡千太郎、片岡佑次郎、片岡當史弥、片岡愛治郎(中村鴈大は欠席)の10人が記者会見を行い、それぞれ抱負を次のように語った。
◇片岡松十郎(沢井股五郎、呉服屋十兵衛)=結成して10年あっと言う間でした。旦那(片岡仁左衛門)がこの2役を演じておられます。情愛を深く演じられ、小道具の上手な使い方などをきっちりと教えていただこうと思っています。
◇片岡千壽(傾城 瀬川、後に平作娘お米)=師匠(片岡秀太郎)がとても大切にしている演目で、お米も大切にされていた。習う機会ななかったので、「あべの歌舞伎」を機会に習いたいなと思っていました。実は師匠が亡くなる10日前に片岡千次郎と一緒に師匠に電話をして「いつか『沼津』をやらせていただきたいと話したところ、「わしが教えるよ」と言われました。
◇片岡千次郎(唐木政右ヱ門、雲助 平作)=雲助 平作は師匠(片岡我當)が大事にされている役でお目にかかって報告したところ、激励されました。師匠はほとんどアドリブのような感じで客席を歩きながら演じられています。全身全霊なりきられているのを真にあたりに見てきました。亀屋東斎としては、半年以上前から改訂本を書いていますが、「沼津」の場面をわかりやすく上演したいと思っています。
◇片岡當吉郎(桜田林左衛門)=4回目から参加していますが、みなさんのチームワークがすごいと毎回思っています。
◇片岡りき彌(政右ヱ門 お谷)=2回目から参加していて、大きく成長できる場だと思っています。芯の強い女性を表現しようと思っています。
◇中村翫政(和田志津馬、荷物持ち 安兵衛=3回目から参加しています。志津馬は「通し狂言」でないと出てこないので、生では見たことがない。成駒屋で上演する時、安兵衛は片岡寿治郎が演じているので、芸の継承をしたい。
◇片岡千太郎(下女 お松)=4回目の参加ですが、1回目から師匠(片岡秀太郎)の側で見ていて、夢の空間でした。
◇片岡佑次郎(忍びの奴 実内)=後見を含めてすべての回に参加しています。毎年、稽古しながら役を仕上げていくのを楽しみにしています。
◇片岡當史弥(股五郎母 鳴見)=8回目の出演。出番はそれほど長くはないが、印象に残る役にしたい。
◇片岡愛治郎(池添 丸八)=2回目の参加。敵討ちの強い想いを持って演じます。(中村鴈大(和田 行家)は欠席)
全員、おだやかな口調ながら、〝晴れの舞台〟にかける意気込みが伝わる言葉だった。
〈あらすじ〉和田家の嫡男志津馬は、恋仲の傾城瀬川(お米)を身請けしたさに、家の重宝名刀 「正宗」を質に入れてしまいます。しかし、これをそそのかした張本人は沢井股五 郎。「正宗」を奪って和田家を陥れ、自らの立身出世を企んでいたのです。 ところがこの企みは、志津馬の父行家にたちまち気づかれます。たまりかねた股五 郎は行家を殺害し、姿をくらましてしまいます。 志津馬は、父の敵股五郎を討ち果たすために、方々行方を探し回り、辛苦を重ねて います。お米は、いたたまれぬ想いを抱きながら、故郷の「沼津」の父平作の元へ身 を寄せているのですが、そこで股五郎に義理ある身の、十兵衛という呉服屋に図らずも巡り合い、その夜、思いもよらぬ真実を知る事になるのです。互いの素性、義理 と恩愛の板挟みに苦悩する十兵衛。そして、意を決した平作がとった行動とは…。監修・指導・片岡仁左衛門、演出・山村友五郎。
〈料金〉前売8000 円 当日8500 円〈全席指定・税込〉 高校生以下 1000 円〈当日要学生証〉3 歳以下の入場不可。(4 歳以上チケット必要)