「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」
      2024年5月31日公開
 相原裕美監督インタビュー
    
団塊の世代あたりは、「帰って来たヨッパライ」「悲しくてやりきれない」といったヒット曲を連発したザ・フォーク・クルセダーズ、中年世代は海外でも高く評価されたサディスティック・ミカ・バンド。そして、若い世代には教科書にも載っている「あの素晴しい愛をもう一度」など…。幅広い人々に強い印象を残した加藤和彦。そんな彼の秀でた音楽性にスポットを当てたドキュメンタリー映画を発表した相原裕美監督に話を聞いた(2024年5月23日・大阪)。
「小学校低学年の頃に『帰って来たヨッパライ』を聴いたのが、加藤さんの原体験。それが『タイムマシンにお願い』などのサディスティック・ミカ・バンドに繋がらなかったし、その間には『あの素晴しい愛をもう一度』などもあって、最初はそれらが同じ人がやっているとは思いませんでした。それほど、彼の音楽はどんどん変化していって、とても革新的でした」。そんな監督が、前作「音響ハウス Melody-Go-Round」を完成。その試写会の時に、高橋幸宏が何気なく言った「トノバン(加藤の愛称)は、もっと評価されてもいいのじゃないかな」という言葉をきっかけに、強く興味を持つようになった。
加藤が自らが書いたり、取材された数々の本を読みCDを聴くなかで、「他人がやらないことにとらわれていたのではないか?と思うくらい、とてつもなく新しいことをやった人だった」という想い。興味がさらに高まった。この作品でこだわったのは、「生き方に焦点を当てるのではなく、加藤さんの音楽の再評価」。劇中には40曲近い加藤作品が流れ、「高齢の人もいて、いま収録しないと生の声を残せない」と約50人にインタビューを行った。アーカイブを含むと100時間の映像を仮編集で6時間30分に、そして2時間の作品を完成した。
ラストには、きたやまおさむ、坂崎幸之助、坂本美雨らがバンドに参加しての「あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver」が流れる。「加藤さんの歌声は1971年のライブから、高橋幸宏さんのドラムをAIで編集して入っています。亡くなった人も含めて歌い継ぐことで、音楽を目指す若い人たちには、新しいやり方で音楽を発信できるのではないかを考える、といったきっかけにもなればいいと思います」。
次回作は未定だが、「音楽にこだわった」作品を作り続けるという。
〈加藤和彦プロフィール〉 1947 年 3 月 21 日~2009 年 10 月 16 日。享年 62 歳。京都に生まれ、小学3 年頃まで鎌倉、その後は高校 3 年まで東京・日本橋で過ごす。京都の龍谷大学在学中、男性ファッション誌でフォーク・グループのメンバーを募集し、ザ・フォーク・クルセダーズを結成。1967年、自主制作アルバム「ハレンチ」に収められていた「帰って来たヨッパライ」がラジオで流れたことで注目を浴び、同年12 月 25 日にメジャーレコード会社からリリースされ、オリコン史上初のミリオンヒットを記録。セカンドシングルに決定していた「イムジン河」が発売日直前に発売中止になり、急遽作った「悲しくてやりきれない」もヒットするが、1968 年 10 月にザ・フォーク・クルセダーズは解散する。 ソロ活動を経て、妻のミカをボーカルにしたロックバンドを結成。1973 年 にアルバム「サディスティック・ミカ・バンド」を発売、1975年には、ロキシー・ミュージックのオープニング・アクトとしてイギリス・ツアーに参加。帰国後、ミカと離婚、その後、作詞家の安井かずみと出会い、1976 年に結婚し、ソロ活動を再開、「ヨーロッパ三部作」と言われる「パパ・ ヘミングウェイ」(1979年)、「うたかたのオペラ」(1980年)、「ベル・エキセントリック」(1981年)を発表。映画音楽や歌舞伎公演の音楽も手掛けた。フッションブランド「Bricks」をつくるなど、ファッションや料理にも造詣が深かった。愛 称:トノバン。

〈監督・相原裕美 プロフィール〉 1960 年生まれ、神奈川県出身。コネクツ合同会社 代表、プロデューサー、映画監督。 ビクタースタジオでレコーディングエンジニアを経験した後、1984 年ビクター音楽産業(株)(現ビクターエ ンタテインメント)ビデオソフト制作室に異動、制作ディレクターとなる。 オリジナルビデオ企画編成の傍ら、ミュージックビデオの黎明期と重なり、同社アーティストのミュージックビ デオを演出・プロデュース共、数多く手掛ける。主なアーティストはサザンオールスターズ(メンバーのソロも 含む)、ARB、Cocco、頭脳警察、フライングキッズ、永瀬正敏、斉藤和義など多数。その仕事の中で当時新人だった岩井俊二や下山天ら映画監督を見出した。 2003 年スペースシャワーミュージックアワードでプロデュースした「東京」桑田佳祐(演出:信藤三雄 脚本: リリー・フランキー)が VIDEO OF THE YEAR を受賞。 2004 年同社映像制作部を設立し同部部長、お笑いレーベル『コンテンツリーグ』の設立や映画に参入。 2009 年同社退社後、2010 年コネクツ合同会社を設立。 監督作品= 『SUKITA 刻まれたアーティストたちの一瞬』『音響ハウス Melody-Go-Round』 『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』ほか。
主な製作・プロデュース映画作品= 『青春★金属バッド』 (06/監督:熊切和嘉) 『赤い文化住宅の初子』 (07/監督:タナダユキ) 『図鑑に載ってない虫』 (07/監督:三木聡) 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』 (13/監督:松居大悟 x 音楽:クリープハイプ) 『光の音色 –THE BACK HORN Film-』 (14/監督:熊切和嘉監督 x 音楽:THE BACK HORN) 『ワンダフルワールドエンド』 (14/監督:松居大悟 x 音楽:大森靖子) 『私たちのハァハァ』 (15/監督:松居大悟x音楽:クリープハイプ
〈キャスト〉きたやまおさむ 松山猛 朝妻一郎 新田和長 つのだ☆ひろ 小原礼 今井裕 高中正義 クリス・トーマス 泉谷しげる 坂崎幸之助 重実博 コシノジュンコ 三國清三 門上武司 高野寛 高田漣 坂本美雨 石川紅奈(soraya) 他。〈アーカイブ〉 高橋幸宏 吉田拓郎 松任谷正隆 坂本龍一 他(順不同)。 企画・構成・監督・プロデュース:相原裕美 。制作:COCOON 。配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES。 協賛:一般社団法人 MAM 2024 年日本/カラー/ビスタ/118分

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