「わが街、道頓堀 OSAKA 1970」
2023年12月16日~25日
大阪松竹座
2025年の関西・大阪万博に向けて、いいこともネガティブなことも取りざたされている昨今、そんな時の取り上げられるのが1970年の大阪万博。ほこりをかぶっていた?「月の石」や「人間洗濯機」の話題が再びクローズアップされている。そんな時代の大阪を舞台にしたのがこの公演。「大阪松竹座開場100周年記念」の掉尾を飾るもので、脚本・わかぎゑふ 、演出・G2と関西を拠点に全国区の活躍をしている2人が、けっこう自由奔放に作り上げている。出演は浜中文一、室龍太、綺咲愛里と、これもまた関西出身。開演前には場内に「時には母のない子のように」や「風」といったその頃に流行ったフォーク、歌謡曲が流れ、それを知っているはいっそう〈タイムスリップ〉が加速する。
観光客やインバウンドで、ごったがえす現代の道頓堀、それほどではないとしても、半世紀前も行きかう人たちでにぎわっていた。それを表現するために、群衆は舞台の左から右へ、右から左へと往来する趣向。さらに、わざと街頭で借金取りに脅され、それでさらに知名度を広めた〝日本の喜劇王〟らしく人物も登場して、ニヤリとさせてくれる。全編にわたって、関西弁が飛び交い、なかでもおやじたちは、大きな声と迫力。たくましきバイタリティーを
表しているのだが、〈ザッツ・KANSAI〉という味付けが少し濃すぎるきらいも。その筋の人との交流もうかがわせる新聞社、さらに意識してなのか、どうか実名の新聞社名をいうのはいかがなものか。
一方、万博を訪れる関西以外の人々、外国人に「クリーン」を印象付けるために、あまりきれいではないが、おいしい!と評判のタコ焼き店に立ち退きを迫るお役所への皮肉が、声高ではなく笑いを込めながら描いている。娯楽作の造りを守りながら、けっこう「骨太」の作品にも思える。
〈ストーリー〉1970年の大阪、日本万国博覧会の開催に向けて期待を高まったいら時代、大阪のとある新聞社では報道部に特別班が組まれ、東京出身の記者、 藤井和也(浜中文一)が転勤してきた。街で会った村井健太郎 (室龍太)にジャズ喫茶に連れていかれ、デザイナーを夢見る波多野葉子(綺咲愛里)と出会う。万博開幕が近づくにつれ新聞社は記念イベントで大忙し。おおいに盛り上がりを見せ順調かと思われたが……。