「當る辰歳吉例顔見世興行」(昼の部)
南座 12月1日~24日
〈昼の部〉
毎年、年末になると「京の師走を彩る恒例行事」という形容詞がニュースで伝わる。1つの公演にとどまらず、南座の「顔見世」はそれほど、季節を告げる風物詩でもある。私にとっても「師走恒例の行事」。1日で昼夜の公演を観劇するというのを30年近く行っている。今年は十三代目 市川團十郎白猿の襲名披露、八代目 市川新之助の初舞台という大きな話題性もあって、連日にぎわいをみせている。今年は4日に昼夜を観劇。2回に分けて感想をアップする。「あらすじ」はホームページなどを参照ください。
◇「双蝶々曲輪日記 角力場」
若旦那役の市川染五郎、遊女役の中村壱太郎の涼しい立ち姿と相撲取りに扮した中村鴈治郎、中村隼人。前半は恋仲の若い男女をしっとりと描き、後半は大一番の「勝ち負け」をめぐる男同士の衝突と心の触れ合い。コトンラストの効いた世話物。鴈治郎がまさに堂々の「存在感」。
◇「歌舞伎十八番の内 外郎売」(写真)
團十郎家のお家芸ともいえる演目を新之助が。長ぜりふを覚えることにまず感心するが、それを超えて口跡の良さ、強弱、さらに少しの間と彼の非凡な才能を感じさせる。今の時代にも歌舞伎界に脈々と受け継がれる「血族」というのを印象付けた。
◇「男伊達花廓」
現代ではなかなか聞けない「男伊達(おとこだて)」という言葉。弱気を助け強気をくじく性格を表している。團十郎がそんな侠客をさっそうと演じる。彼の長女、中村ぼたんと共演。「男性ばかりで構成する」と思われる歌舞伎だが、幼い頃には少女も出演。さらに、今年10月の「文七元結」(歌舞伎座)では、寺島しのぶ(尾上菊五郎の長女)が出演して話題になったが、この世界でもいずれ「門戸開放」されるかも?そんな期待を持たせる、父娘共演だ。
◇「壽三升景清 歌舞伎十八番の内 景清」
江戸歌舞伎独特の「荒事」と呼ばれるダイナミックな演出。巨大な海老を背景に、團十郎が演じる勇壮な景清。そのバックに太棹「津軽三味線」の演奏が流れるのは斬新だった。
