「當る辰歳吉例顔見世興行」(夜の部)
南座 12月1日~24日
市川團十郎、片岡仁左衛門らがそろう「顔見世」。客席を見渡すと、いまや普通にさえなってきた外国人観光客の姿は見当たらず。これはいいことなのかどうかは、迷うところだが…。それだけ、歌舞伎ファンが待ち望んだ公演ということ。
〈夜の部〉
◇「仮名手本忠臣蔵 衹園一力茶屋の場」
片岡仁左衛門が当たり役、大星由良助を演じる。一力茶屋で遊興にふける?姿と、一瞬かいま見せる鋭い眼光、武士の魂。片岡孝太郎が扮するおかるが鏡越しに密書を見てしまう趣向も見もの。そこへ、おかるの兄がやってきて…。中村芝翫が骨太の芝居をみせ、上方と江戸のコラボがおもしろい。
◇「十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助襲名披露 口上」
最後に「睨んで見せます」と観客に向かってお家芸の「睨み」を披露。なんとも奇異な光景にも思えるが、これこそ歌舞伎独特の決まり事!いいことがありそうな気にしてくれる。
◇「歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜」(写真)
最後は團十郎の助六。開幕から30分ほどまでなかなか登場しないので、よけいに「待ってました!」の気分に。男前だが、やんちゃな助六。道行く人に「股くぐり」をさせるのだが、それを鴈治郎が軽妙に演じて笑いを誘う。「三国志」に「韓信の股くぐり」のくだりがあるが、セリフにもあるようにそれを意識した趣向だろう。
以上、午前10時30分に「昼の部」が開演して、午後8時30分に「夜の部」が終演。さすが、疲れもあるが、この師走の慣習はまだまだ続けていきたいと思いながら帰路についた。