「キャメロット」
2023年10月7日~28日
日生劇場
11月4日~20日
松竹座
1960年代、70年代を中心にした映画ポスターを収集していて、洋画を中心に1000枚ほどを持っている。思い出深い映画は、ポスターのビジュアルの良し悪しは全く無関係だが、それとは別の意味で大切に保管しているのがミュージカル映画「キャメロット」(1967年)のポスター。イラストで描かれたそれは、カラフルで格調もあって、印象に残る1枚だ(ネット検索で観ることができる)。
そんなタイトルの響きを久しぶりに聞いた。映画に熱中していた高校時代に映画を観たが、イギリスの歴史に疎く、正直を言ってストーリーは覚えていない。しかし、アーサー王を リチャード・ハリス、グィネヴィアを ヴァネッサ・レッドグレイヴとイギリスを代表する俳優、さらに、ランスロットを、フランコ・ネロが演じ、歌っているのは意外だった。というのも、ネロと言えばマカロニウエスタン「続・荒野の用心棒」に主演するなどアクション俳優のイメージが強かったからだ、余談ながら、この映画で共演したヴァネッサ・レッドグレイヴと結婚と、ランスロットとグィネヴィアとの恋を成就させた。
もともとは1960年にブロードウェイで上演、脚本はアラン・ジェイ、作曲はフレデリック・ロウという「マイ・フェア・レディ」コンビによる作品。なぜか。日本では上演されることなく、今回が日本初演となる。前述したように、アーサー王伝説は日本ではなかなかなじみがない?ようにも思えるが、いろいろな形で演劇、映画になっていて、意識しないうちに接しているかもしれない。映画でいえば、「キング・アーサー」など史実を描いたものもあるが、ディズニーの「王様の剣」は子供でもわかるように楽しく作られている。また、ディズニー版「美女と野獣」では映画、舞台とも、数えきれないほどの本が並ぶ書斎でベルが野獣にアーサー王伝説の本を読み聞かせるシーンが登場する。このほか、宝塚では宙組誕生第1作でもある「エクスカリバー」など、OSK日本歌劇団では「円卓の騎士」などが上演されている。
そして本題、日本初演となるこの舞台では、アーサー王を坂本昌行、ランスロット を桐山照史、グィネヴィアを唯月ふうかが演じている。戦争が繰り返される時代、騎士たちを描いているが、男たちの勇壮な姿、それを支える女性という東西ともに共通する「戦国ドラマ」ではなく、この3人の心理を描くことを重視している。単純にいうと女性を軸にした「三角関係」なのだが、男性同士は憎しみというよりも、相手を思いやろうとする葛藤を描いている。つまり、〝恋敵〟の衝突というのであれば、わかりやすく伝わってくるが、そうではないのが、この作品の独自性だろう。一方、後半にはそこに現れて「三角関係」をことさらに取り上げ混乱させるモンレッドという人物が登場。こちらは、彼らへの敵意むきだしで謀略を繰り返す。わかりやすいキャラクター。観客はどの登場人物に共感するか? いろいろな角度から味わうことができる意欲作だと感じた。
〈ストーリー〉イングンドの都キャメロット。アーサー王 (坂本昌行) は政略結婚を嫌がり逃げ出したグィネヴィア(唯月ふうか)と恋に落ちる。戦いが絶えないなか、アーサー王は武力ではない統治を目指して円卓会議を発案、イングランド全土から騎士を招く。フランス人騎士のランスロット (桐山照史)も「円卓の騎士」 の一員となる。 アーサー王はランスロットに全幅の信頼を置くようになるが、その裏でランスロットと最愛の妻グィネヴィアが密かに愛し合っていることを知る。苦悩するアーサー王に追い打ちをかけるように隠し子のモルドレッド (入野自由)が現れる…。
〈 スタッフ〉脚本 歌詞 ・ アラン・ジェイ・ラーナー。音楽・ フレデリック・ロウ。演出・宮田慶子。